フォルクスワーゲン新型「ゴルフGTI」 乗ったらやっぱり、死角なしの出来 その魅力とは?

公開 : 2022.04.08 18:15

新型ゴルフGTIに試乗。チェック柄の専用ファブリックシートがたまりません。アクティブ・シャシーコントロール「DCC」採用車をレポートします。

注目はシャシーの電子制御

「ベンチマーク」とか「基準器」とかに喩えられるVWゴルフ。

多様化する価値感の中で指標とか標準と言われても中々ピンと来ないが、自分の価値感のキャリブレーションに打って付け。夜の海の灯台のような存在だ。

新型ゴルフGTI(ピュアホワイト)。選べるパッケージを3種類採用した試乗車。アダプティブ・シャシーコントロール「DCC」と、フロントの電子制御LSDを駆使した走りをレポートしよう。
新型ゴルフGTI(ピュアホワイト)。選べるパッケージを3種類採用した試乗車。アダプティブ・シャシーコントロール「DCC」と、フロントの電子制御LSDを駆使した走りをレポートしよう。    前田惠介

それはゴルフの性能面での象徴となるGTIも同様だ。初代(日本未導入)が誕生してから45年、新型で八代目となる。

コンパクトカークラスそのものがグレードアップを重ね、ホットハッチも増えたため、相対的にはGTIのアドバンテージは目減りもしたが、コンパクトな2BOXにして上級クラスに勝るとも劣らない高速性能を備えたグランドツアラーという立ち位置は変わっていない。

八代目のパワートレインは2Lターボと7速DSG(DCT)。プラットフォームにはMQBを採用するなど、基本ハードウェアの大きな飛躍はないのだが、シャシー周りの電子制御デバイスは注目のポイント。

多板クラッチを用いた電子制御油圧フロント・ディファレンシャルロック(電子制御LSD)の採用と電子制御サスのDCCを設定。「速さ」だけでなく、ツーリングカーにとって欠かせない要点となる安心も含めた信頼感・快適に対して積極的にアプローチ。

ホットハッチではあるがボーイズレーサーではない、GTIの求める大人の高性能が設計概要にも現れている。

ハンドリング どんな感じ?

セオリーに沿ってきちんと纏められいる。GTIのハンドリングの第一印象である。

と書き出すと先代のGTIでも同じように記したような。別に呆けている訳ではない。進化の方向性に振れがなければ当然だ。

純正インフォテイメントシステム「ディスカバー・プロ」パッケージを採用するゴルフGTIの前席内装。
純正インフォテイメントシステム「ディスカバー・プロ」パッケージを採用するゴルフGTIの前席内装。    前田惠介

レベルは違っていても要約すれば同じ。それは一昔前の切れ味重視の初期ゲイン主義が蔓延っていた時も変わらなかった。

言葉にすれば、過不足ない操舵追従にちょっと深めの舵角を維持する弱アンダーステアを高速コーナリングまで維持、加減速や路面うねりに対しても方向性の乱れ少なく、速度によるコーナリングラインの変化も落ち着いている、となる。

操安性の王道ともいえる特性だ。

この特性を維持する速度域がさらに拡大したのが新型。電子制御LSDの効果も大きいのだろうが、タイトターンの回り込みも高速コーナーの据わりも良バランス。

素直過ぎる特性。乗りこなすためのコツは一欠片も不要である。

乗り心地/パワートレインについて

付け加えるなら、乗り心地も歴代GTIのベスト。これはDCCの効果大。エコとコンフォート、スポーツ、カスタムが設定され、カスタムでは好みに応じて硬さを15段階で選択できる。

コンフォートではストローク速度を抑えながら穏やかな乗り味を示す。

ゴルフGTIの後席内装。試乗車はファブリックシート車。レザーシートがOP設定されている。
ゴルフGTIの後席内装。試乗車はファブリックシート車。レザーシートがOP設定されている。    前田惠介

ただし、うねり通過などでの挙動の抑えや操舵感が異なるが、走行状況に応じて自動制御されるため、最も柔らかいセットにしても操縦性に大きな変化はない。

また、カスタムで最もハードな設定を選択すれば昔のGTIのような高減衰の乗り味も楽しめる。気分に合わせて乗り味を変えられるのも新型GTIの見所だ。

VWと言えばダウンサイジングターボの先駆でもあり、現行のゴルフも全モデルでターボを採用する。

黎明期は低中回転域の浅いスロットル開度でのコントロール性に重きを置いていたが、最近は高回転域の伸びやかさなど程よく昂揚感もある。

その実用性とファントゥドライブの長所をそのままに高性能化したのがGTIのパワートレインだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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