現代のニーズを見事にカバー アウディS8 クワトロへ試乗 571ps+四駆のリムジン

公開 : 2022.06.03 08:25

快適なまま気張らず速いペースを保てる

アルミホイールは20インチが標準だが、試乗車は21インチを履いていた。そのためか、走行ノイズの遮断性は平均点程度。鋭いタイヤの上下動は、完全にはなだめきれていなかった。

とはいえ、市街地だけでなく郊外の一般道や高速道路でも、驚くほど安定した姿勢制御を披露する。終始、安定した移動空間が保たれていた。

アウディS8 クワトロ(英国仕様)
アウディS8 クワトロ(英国仕様)

コーナーでは最大3度まで、ボディを内側に傾けることが可能。さらにダイナミック・モードを選ぶと、フロントとリアでサスペンションの硬さを常時最適化し、アクティブ・アンチロール機能のようにも振る舞い、鋭い操縦性を引き出してもくれる。

乗り心地ほど、その効果に息を呑むことはない。それでも、高い速度域でのステアリング精度への貢献度は間違いない。常に平静なだけでなく、低速域での敏捷な身のこなしも実現させている。

大型リムジンらしく、S8のステアリングはアシストが強く、軽く、フィルターが掛かっているように感じる。手応えが直感的で自然というわけではない。それでも扱いやすく、快適なまま、気張ることなく速いペースを保って運転できる。

V8ツインターボ・エンジンと8速ATとの組み合わせも秀抜。素晴らしくスムーズでありながら、V8らしいソウルフルなサウンドも僅かに楽しませてくれる。上質でありながら、回転数を高めれば豊かなトルクとパワーで応えてくれる。

現代のエグゼクティブのニーズをカバー

シートも極めて快適。ワイドでソフトで、しっかり体を支えてくれる。リアシート側の空間は、標準のホイールベースでも不満ない。

ダッシュボード中央には、インフォテインメント用の大型タッチモニターが用意され、アウディ独自のMMIシステムを実装。時折タッチへの反応が鈍く感じることもあったが、このクラスのシステムとして完成度は低くない。

アウディS8 クワトロ(英国仕様)
アウディS8 クワトロ(英国仕様)

物理的なコントローラーはないものの、ショートカットキーが備わり便利だ。試乗車にはフロントシートの背もたれに、個別のタッチモニターも据えられていた。

S8はリラックスして移動できる洗練度と、高速で走れるダイナミックさとが共存している。興奮するような鋭い走りとまではいえないが、高速なラグジュアリー・サルーンとしてユニークな才能を持ち合わせている。

快適で豪華で、安楽な高性能リムジンを探すなら、S8を上回るモデルは限定的。選ぶ理由は人それぞれだとしても、現代のエグゼクティブのニーズを見事にカバーしていることは間違いないだろいう。

アウディS8 クワトロ(英国仕様)のスペック

英国価格:10万2730ポンド(約1643万円)
全長:5190mm(標準A8)
全幅:1945mm(標準A8)
全高:1473mm(標準A8)
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:8.5-8.7km/L
CO2排出量:260-265g/km
車両重量:2220kg
パワートレイン:V型8気筒3996ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:571ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2050-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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