現代のニーズを見事にカバー アウディS8 クワトロへ試乗 571ps+四駆のリムジン

公開 : 2022.06.03 08:25

571psのV8ツインターボ・エンジンを搭載し、堅調な人気を誇るS8。2022年仕様を英国編集部が評価しました。

4.0L V8ツインターボに知的なシャシー技術

全長約5.2mというサイズに、リムジンとして使える風格と突出した快適性。秀でた動力性能を備えているが、運転するのではなく運転してもらうためのサルーンといえる。そんなS8が、英国ではA8全体の販売台数の2割を占めるという。

本来、A8はリアシートでリモート会議やメールの返信をこなすような、CEOが乗るためのクルマだ。アウディの「S」とは、少し一致しない個性といえる。貴重な時間を無駄にしない、高速サルーンだと悟られたくない人が、S8を購入しているのかもしれない。

アウディS8 クワトロ(英国仕様)
アウディS8 クワトロ(英国仕様)

週末には、自ら運転を楽しむオーナーもいるのだろうか。最新技術満載のアウディを望むような、ブランドファンもいらっしゃるのだろう。少なくとも、S8のラグジュアリーな訴求力は間違いない。様々な理由が、それ意外にあるとしても。

現世代のA8は2017年に販売がスタートしているが、S8の登場は2020年。4.0L V8ツインターボ・ガソリンエンジンに四輪駆動、最上級の洗練性や上質さ、走行性能の割に控えめなスタイリングなどが融合し、成功を収めている。

通常のA8とは異なる、高度なドライブトレインやサスペンション技術も標準装備。571psという最高出力は、クワトロおなじみのメカニカル・センターデフに加えて、アクティブ・スポーツ・リアデフを介して効果的に路面へ伝達される。

四輪操舵システムも標準で付いてくる。A8ではオプションだ。

予測型アクティブ・エアサスは特筆モノ

多彩な技術のなかで、サスペンションは特に注目に値する。A8では一般的なアダプティブ・エアサスペンションが支えるが、S8は知的なプレディクティブ(予測型)・アクティブ・エアサスペンションを備える。

これは、フロントカメラとレーザーセンサーで路面を読み取り、四輪個別に搭載したアクチュエータで最適な制御を加えるもの。車高調整も可能だ。地域によってはA8にもオプションで組めるが、英国の場合、このサスペンションを選べるのはS8に限られる。

アウディS8 クワトロ(英国仕様)
アウディS8 クワトロ(英国仕様)

予測型アクティブ・エアサスは非常に高機能で、運転席のドアを開く瞬間から仕事ぶりを確かめられる。乗り降りしやすいように、わずかに車高が持ち上がるのだ。しかも、多くのライバルより遥かに高速で。

その素早い動きを実現させているのが、電圧48Vで動作する4基のアクチュエータ。110.4kg-mもの大トルクで動くという。ボディが傾くような高速コーナーや、大きなうねりでリバウンドするような場面では、ボディを可能な限り水平にも保ってくれる。

ドライブモードでコンフォート+を選択すると、更なる感動を与えてくれる。事前に速度抑止用のコブ、スピードバンプを感知すると、自動的に車高が50mm上昇。アクチュエータ自身が、サスペンションとあわせて衝撃を吸収する役目も果たす。

15km/hから30km/h程度で通過すると、驚くほど見事に膨らみを均す。車内にいると、殆どその存在がわからないほど。唸らされてしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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