電動化スーパーカーの不安を払拭 フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノへ試乗 前編

公開 : 2022.08.13 08:25

ピッコロV12と呼ばれる3.0L V6エンジン

3.0L V6エンジンのバンク内側に搭載される2基のターボは、18万rpmまで回転する。熱効率を高め、レスポンスを鋭くするレイアウトが取られている。その印象は壮大。当初の懸念が、嘘のように晴れていった。

システムをオンにすると、デフォルトではV6エンジンは眠ったまま。踏み心地の軽いアクセルペダルを押し込むか、パワートレインの設定をハイブリッドからパフォーマンス・モードへ切り替えると、稼働状態に入る。

フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(英国仕様)
フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(英国仕様)

始動時はコールドスタートのように、鳥肌が立つほどのひと吠えを響かせる。エグゾースト内のバルブがオープン状態になり、ドラマチックにお目覚めする。

V6エンジン単独での最高出力は、663ps/8000rpmある。だが、その半分だったとしても、クルマ好きなら夢中になってしまうユニットだと思う。

中回転域では太い低音域が大きく主張し、高回転域ではキレの良い高い快音を響かせる。そこへ吸気音も加わる。この重なり合いがユニーク。これほど自然吸気ユニットに近い音響を楽しめる、ターボユニットは他に存在しない。

加えて、駆動用モーターのアシストが低回転域から控えている。5速に入れたまま、V6エンジンが2000rpmで回っていても、加速の勢いは凄まじい。熱狂的な勢いや豊かな表情は、レブリミットの8500rpmまで衰えることはない。

マラネロは、このF163型V6エンジンをピッコロ(小さな)V12と呼ぶ。パワーの高まり方や聴覚的な興奮を味わうと、その理由も理解できる。

最長24kmを電気だけで走行可能なPHEV

その印象を補強してくれているのが、8速デュアルクラッチAT。フェラーリ・ローマや、SF90 ストラダーレなどと同じユニットだ。

レッドライン間際でのシフトアップも、イベントと称したくなるほど見事。それでいて、交通量の多い区間でのシフトダウンも巧妙に処理する。

フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(英国仕様)
フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(英国仕様)

ステアリングホイール裏のパドルを弾くと、その有能ぶりを最も確認できる。激しく鋭い、ハイブリッド化されたパワートレインと見事なペアを組み、魅力を高めている。

V6エンジンと8速デュアルクラッチATとの間に挟まれるのが、167psを発揮する駆動用モーター。専用クラッチが搭載され、エンジンの回転へ影響を与えないよう、接続を完全に断つことも可能。同時に、EVモードでの走行も実現している。

左右シート間のフロアに搭載される駆動用バッテリーは、73kgと軽くはない。そのかわり、eドライブ・モードを選択すると、最長24kmを電気の力だけで走行できる。マラネロにおける、電動化を象徴する部分だ。

296 GTBの航続距離は、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)基準でも長いとはいえない。しかし、真夜中にひっそりガレージへクルマを滑らせたり、早朝に気を配ることなく出発できる能力を、有用だと感じるオーナーも少なくないはず。

EVモード時の質感は、もう少し磨ける余地も残っている。アクセルペダルを放すと、回生ブレーキが想像以上に強く効く場合がある。変速はもっと滑らかでもいい。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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