電動化スーパーカーの不安を払拭 フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノへ試乗 後編

公開 : 2022.08.13 08:26

マラネロ最新のV6ハイブリッド・スーパーカー、296 GTB。英国編集部が一般道でハードコア仕様の仕上がりを確かめました。

流暢さと直感性を実現した電子制御技術

フェラーリ296 GTBは、電動化技術以外のハイテクも満載。サイド・スリップ・コントロール(eSSC)やアンチロック・ブレーキシステム(ABS)エボなどのほか、フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー(FDE)2.0も搭載する。

この最新のFDE 2.0は、簡単にいうなら高度に知的な電子制御リミテッドスリップ・デフ。ジャイロセンサーなどでクルマの動きを感知し、ブレーキやパワーステアリング、トラクションとスタビリティ・コントロールなどを統合制御する。

フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(英国仕様)
フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(英国仕様)

ドライバーが選択したe-マネッティーノのモードで、その制御具合は変化する。どのモードであっても、操縦の自由度や敏捷性、安定性を見事に融合させている。

フェラーリはF430以来、この電子制御技術を磨き上げてきた。296 GTBに実装されるシステムは、その正常進化形といえる。驚くほどの流暢さと、直感性を実現させている。

英国の公道を駆けていくと、ステアリングホイールの表現力は素晴らしいと評するほどではない。それでも、レシオと重み付けに非の打ち所はない。

フラットな路面では、リアアクスルの剛性感はミドシップ・モデルの基準でも柔らかく感じる。だが、フロント側のスプリングレートも相応にソフトなため、操縦の精度は秀逸そのものだ。

F8 トリブートより短いホイールベース

296 GTBのボディは低すぎず、ワイド過ぎず、カーブの連続する道をなぞっていく体験は楽しいのひとこと。フロントのダブルウイッシュボーンが路面へ追従し、大トルクを路面に伝えるリアタイヤが、繊細なライン調整を許してくれる。

ホイールベースは、F8 トリブートより短い2600mm。長さで最も接近しているのは、20年以上前の360 モデナにまで遡る必要がある。このホイールベースが、特性の鍵を握っているようだ。

フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(英国仕様)
フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(英国仕様)

挙動は自然で、エネルギッシュで、乗り始めた瞬間からボディがひと回り小さく感じられる。その結果、システム総合で830psという動力性能を備えていながら、英国の公道でも存分に堪能することができる。

短いホイールベースは、アセット・フィオラノ・パッケージとの相性にも優れる。タイヤがミシュラン・パイロットスポーツ4Sから、パイロットスポーツ・カップ2Rへアップグレードされている理由が大きい。

タイヤのグリップ特性を活かすべく、シャシーの自由度を高めるレース・モードの活用が可能だった。2速や3速で旋回するコーナーでアンダーステアをなだめ、早めのアクセル・オンでリアが僅かに外へスライドし始める。

とても好感触で、まるでアルピーヌA110のような手懐けやすさがある。最大トルクは3倍も違うとはいえ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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