確実に心を掴むドライビング体験 ポルシェ911 GT3 2年連続の優勝 BBDC 2022(7)

公開 : 2023.01.04 13:45

今年1番運転の楽しいクルマは? BBDC 2022(1) 公道とサーキットで11台を乗り比べ

当初の予想は718ケイマンか296 GTB

最高出力510psのポルシェは、さらに100馬力くらいパワフルに感じる。ジワジワと、その実力へ魅せられることになった。

992型の911 GT3が発表された当時、能力を大幅に高めたことへの見返りとして、シリアスすぎるのではと心配する声も聞こえていた。公道で許される速度域では、魅了される味わいを引き出せないのではないかと。

ポルシェ911 GT3(992型/英国仕様)
ポルシェ911 GT3(992型/英国仕様)

しかし、まったくの杞憂だったことが2021年のBBDC選手権で明らかになった。そしてディフェンディング・チャンピオンのポルシェ911 GT3は、2年連続で頂点に輝くことになった。34回目を数えるこの選手権では、極めて稀な結果といえる。

疑いようがないほど、見事な仕上がりであることを裏付けたといえる。この選出には納得、という読者も少なくないかもしれない。

パワフルなリアエンジンのポルシェは、最初から軽視されていたわけではない。実際、お互いの得点を集計した時、911 GT3が優勢だったことに大きな疑問を抱いた審査員はいなかった。

ポルシェ718ケイマン GT4 RSも優れていた。だが、少し違うフィールドにいた。

比較試乗が始まる前は、審査員の多くがドラマチックな718ケイマン GT4 RSが優勝するのでは、と予想していたことは間違いない。あるいは、史上最高傑作の量産フェラーリの1台として数えられる、296 GTBではないかと。

審査員の心を確実に掴んだ911 GT3

ノース・ウェールズ地方の一般道やアングルシー・サーキットでは、フェラーリ296 GTBに与えられた能力の深さと広さに度肝を抜かれた。落ち着きがあり快音を響かせる、718ケイマン GT4 RSのドライビング体験に感動し、称賛する声が溢れた。

それでも、911 GT3は確実に5名の審査員の心を確実に掴んでいた。慌てる素振りなく。

ブルーのポルシェ911 GT3とイエローのポルシェ718ケイマン GT4 RS
ブルーのポルシェ911 GT3とイエローのポルシェ718ケイマン GT4 RS

296 GTBよりコミュニケーション力が豊かで、繊細なフィーリングがドライバーへ常に伝わってきていた。718ケイマン GT4 RSより操縦性の自在度が高く、懐も深かった。随一といえるライン調整のしやすさや、超高精細な正確性が備わっていた。

911 GT3は、一般道とサーキットの両方で、より直感的で濃厚。見事なドライビング体験を生み出していた。

ワインディングでは胸のすく速度で流暢に走り、ピットレーンを飛び出せば、崇高な感覚と実力でドライバーを魅了した。まさに、現代の高性能モデルを象徴するような、最高の仕上がりだった。

2022年の英国ベストドライバーズカーには、2021年に続いて992型のポルシェ911 GT3が選ばれた。少し気が早いものの、2023年に前例のないハットトリックを決める可能性も、ゼロではないかもしれない。

最後に、AUTOCARのBBDC選手権へ賛同しノミネート車両を提供してくれた各社へ、この場を借りて感謝を申しあげたい。このコンテンツを最後までお読みいただいた、読者の皆さんへも。

記事に関わった人々

  • オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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