逃亡生活ついに終了 デュナミスレーシング納車詐欺事件 逮捕された社長の「不正とトラブル」

公開 : 2022.10.29 05:45

購入代金は小谷氏や会社の借金返済に

実際はディーラーに発注されていない例も多数あった。

通常は、客から小谷氏の口座に入金されたお金は速やかに期日までにディーラーに入金され、入金を確認したディーラーは納車の準備に入る。

過去には実際に納車はされていたが、小谷氏が行方をくらます直前は顧客が注文し、支払いをしたものの、デュナミスレーシングからディーラーへ注文すらされていなかったケースも
過去には実際に納車はされていたが、小谷氏が行方をくらます直前は顧客が注文し、支払いをしたものの、デュナミスレーシングからディーラーへ注文すらされていなかったケースも

そして、納車準備が完了したらディーラーからデュナミスレーシングにクルマを移動。

客はデュナミスレーシングにてクルマを受け取る(いわゆる納車)、という流れになる。

近年はほとんどが納車されておらず、筆者が調べた限り2021年は5台以下とみられる。

たしかに新車の納期遅れはコロナ禍以降、現在も続いている。

それをいいことに、小谷氏は「コロナで納車が遅れている」という理由で実際に掛かる納期よりもかなり長い間納車せず、逃げ回っていた。

客としては新車購入資金として銀行や信用金庫などから現金を融資してもらってそれらを期日までにデュナミスレーシングに入金している。

多い車種は300~500万円の価格帯が中心となるが、軽自動車もあれば、メルセデス・ベンツGクラスなどの高級車(しかも納期が本当に2~3年はかかる)もあった。

そのお金はどこに流れたのか?

可能性として大きいのは、たまりにたまった借金返済に充てられたということだ。

また、あまりにも納車に時間かかかるため怒った購入者が強い態度で返金を迫り仕方なく返金した例もそこそこある。

もちろん、返金を希望する人すべてに返金したわけではない。

客から小谷氏に誓約書を書かせたり、ディーラーの店長とともにデュナミスレーシングに乗り込んで返金を迫ったり、強い態度で直談判した人にだけ渋々返金をしていた実態もある。

別の客からの入金が即座に他の客への返金に回されたという流れもある。

トラブル続出でディーラー「出禁」に

長野県内のディーラーの中には過去に入金されないなどのトラブルが多発していたことから、デュナミスレーシングとの取引に慎重になっていた(出禁に近い)ディーラーもあった。

そのため長野県在住の客からの注文に対して、埼玉や東京、新潟など県外のディーラーに発注していた例もあった。

被害者と小谷氏とのやりとり。
被害者と小谷氏とのやりとり。

それに気づいて小谷氏に確認を迫った客もいたが、「長野は納車が遅いから東京のディーラーに発注した」と言われたという。

ある日突然、遠方の見知らぬディーラーK店から電話がかかってきたSさんの場合、「お車の用意ができていますが……デュナミスレーシングからの入金がありません。名義もS様のお名前になっております。あとは、入金が確認されればすぐに納車できるのですが」という連絡だったという。

Sさんは1年近くまえにデュナミスレーシングに対して車両購入代金を支払っており領収書もある。

小谷氏はK店に発注していたようだが、実際には入金ができていなかった。

結局、車検証の名義までSさんになっていたが、Sさんには納車されずに流れてしまったというわけだ。

また、夜逃げが発覚する1か月前の2021年12月初旬に店を訪れたBさんは不思議な光景を目撃している。

「小谷社長の留守に店舗に行ったら注文書が120件位あったのを記憶しています。壁に貼っていたり、デスク上にセットされていたり、一般客から見える位置にありました。おそらく、それらすべて1台もディーラーにオーダーされていなかったと思います」

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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