中国発のゲームチェンジャー オラ・ファンキーキャットへ試乗 航続310km 競争力は高い

公開 : 2022.12.05 08:25

ジェントルに運転すればとても快適

ただし、ステアリングホイールの感触は今ひとつ。切りはじめから手応えの変化が殆どなく、手のひらへ伝わる情報量も薄い。充分な速さを発揮するとはいえ、手頃な価格のドライバーズBEVとは呼べないだろう。

ステアリングホイールの直径がやや大きく、都市部の交差点や急なカーブでは若干忙しい。トラクション・コントロールは、濡れた路面でアクセルペダルを踏み込むと、空転するタイヤをなだめきれない。

オラ・ファンキーキャット・ファーストエディション(英国仕様)
オラ・ファンキーキャット・ファーストエディション(英国仕様)

ファンキーキャット GTがどんなセッティングを得るのかは不明だが、現在の小型BEVのカテゴリーで存在感を示すには、ステアリングラックとダンパーの改良は必要だろう。全体的にもう少しタイトにしたいところだ。

ファンキーな気分は抑えて、ジェントルにファンキーキャットを運転すれば、心地良く交通の流れに合わせて移動できる。全体的に、とても快適なクルマではある。

車内は広々としていて風通しが良く、装備も充実している。メーターに表示される航続距離は正確で、ルートや充電の計画も立てやすい。

既に英国では、3万ポンド(約498万円)前後の価格帯で、より長い航続距離を持つBEVも売られている。ファンキーキャットより安価なMGモーターのMG4は、452kmがうたわれている。

だとしても、ファーストエディションの価格価値は高い。急速充電は100kWまで対応し、競合には及ばないにしても、不満ない能力を叶えている。

中国からやってきたゲームチェンジャー

ファンキーキャットのドライビング体験を濁していたのが、可能な限り多くの技術を手頃な価格で実現しようという、オラの野心的な考えによるもの。その1つが、小さなタッチモニターでの操作が前提のナビゲーションだ。

2023年前半には、アップデートでスマートフォンとのミラーリング機能に対応するというが、それまでは小さな画面で耐える必要がある。インフォテインメント・システムのメニュー自体も操作が煩雑に思えた。

オラ・ファンキーキャット・ファーストエディション(英国仕様)
オラ・ファンキーキャット・ファーストエディション(英国仕様)

音声アシスタントも搭載するが、数世代前のシステムのように聞き取りが悪い。窓の開閉と、自宅(発表会の会場)までのナビの指定は、丁寧に話すことで理解してくれた。しかし、ラジオの選曲やクルマの機能の変更は、最後までわかってもらえなかった。

制限速度を超えると警告され、ドライバーがあくびをすると休憩が促されるのだが、その音声も聞き取りにくい。設定を変えられるのかもしれないが。もっとも、ソフトウエアは無線アップデートに対応しており、近いうちに改善されるだろう。

ファンキーキャットが英国へ上陸すると聞いて、筆者は期待して待っていた。クリクリとしたヘッドライトを持つスタイリングは個性的だし、仕様と価格を比較すれば、競争力は高いといえる。BEVハッチバックの間口を広げてくれるはず。

MG4ほどではないが、中国からやってきたゲームチェンジャーの1台になり得る。路面が乾燥した条件で、改めて試乗してみたい。追って登場するロングレンジ仕様も楽しみだ。

オラ・ファンキーキャット・ファーストエディション(英国仕様)のスペック

英国価格:3万1995ポンド(約531万円)
全長:4235mm
全幅:1825mm
全高:1603mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:8.3秒
航続距離:310km
電費:6.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1540kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:48.0kWh
急速充電能力:100kW
最高出力:171ps
最大トルク:25.3kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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