【本田宗一郎DNAは息づいている】 型破りで破天荒なホンダの目標 EV化の裏には現実的な考えが

公開 : 2024.05.18 08:25

世界的なEV失速傾向でも、意欲的なEVシフト路線を堅守するホンダ、その裏には現実的な戦略が隠れているようです。メディア向け「2024ビジネスアップデート」説明会でEV普及変動は、元々織り込み済みと発言。

EV普及の停滞を理解した上でもEVシフトを推進

2024年5月16日、ホンダはメディア向けの「2024ビジネスアップデート」説明会を実施した。

その冒頭で、ホンダの三部敏宏社長は「4輪電動化をとりまく環境は激しい変化にさらされ、北米・ヨーロッパではEV普及が踊り場に差し掛かった」と現状のEV販売が停滞していることを認めた。

ホンダ・メディア向け「2024ビジネスアップデート」説明会
ホンダ・メディア向け「2024ビジネスアップデート」説明会    鈴木ケンイチ

ホンダはグローバルにおけるEV/FCEVの販売比率を2030年で40%、2035年で80%、2040年に100%という非常に高い目標を掲げている。ところが、昨今の市場変化により、EV普及の雲行きが怪しくなっているのだ。

しかしながら三部社長は、そんな状況を理解した上で、「数年といった短期間ではなく、もっと長期的な視点で見れば、EVシフトは着実に進んでいくと確信しています」と言い切り、「(環境負荷ゼロを)誰かがやってくれるのを待つのではなく、私たちホンダがフロントランナーとなって実現を目指していきたい」と意気込みを語ったのだ。

その上で「EV黎明期である現在、EVの普及スピードに変動があることは、もともと織り込み済みであり、2020年代後半以降に訪れるEV普及期を見据えた中長期的視野で、着実な仕込み、強いEVブランド、そして強い事業を構築していくことが、今の私たちの最大のミッションと考えています」と言う。現状は厳しくとも、意欲的なEVシフトのホンダの計画に揺らぎはないというわけだ。

2030年に200万台のEVを生産するための仕込み

では、そんなホンダのプランを進めていくと、2030年に200万台レベルのEVを生産することになる。

その実現のために、ホンダは3つの取り組みを説明した。それが「ホンダならではの魅力的なEVの投入」/「バッテリーを中心としてEVの包括的バリューチェーンの構築」/「生産技術・工場の進化」となる。

ホンダ・メディア向け「2024ビジネスアップデート」説明会
ホンダ・メディア向け「2024ビジネスアップデート」説明会    ホンダ

「ホンダならではの魅力的なEV」とは、2026年より市場導入を予定する「ホンダ0シリーズ」を指す。「Thin(薄く)」/「Light(軽く)」/「Wise(賢く)」をコンセプトとしており、低い車高に対して広い室内、従来比100kgの軽量化、300マイル(約480km)以上の航続距離、進化するAD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)を搭載するという。

「バッテリーを中心としたEVの包括的バリューチェーンの構築」は、EV性能のカギとなるバッテリーをどのように調達するかという計画だ。現状の地域ごとに外部パートナーからの調達を、2020年代後半以降は外部調達と自前での生産を組み合わせる。バッテリーコスト20%ダウンと、より幅広い垂直統合型バリューチェーンの構築を目指すという。

「生産技術・工場の進化」は、本格的なEV普及期に向けた生産技術の開発だ。メガキャストやバッテリーセルの「フレックス生産システム」、デジタルツインなどを導入。2028年に稼働するカナダのEV専用工場では、従来のエンジン車/EVの混流生産に比べ、約35%もの生産コストカットを目指すという。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。

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