「ポニーカー」では表現不足 フォード・マスタング 289  誕生60年をルート66で祝福(2) 夢のロードトリップ

公開 : 2024.05.18 17:46

ポニーカーという分野を創出し、初年度の最多販売記録を樹立した初代マスタング スピードボート的な中毒性あるスピード感 誕生60年を祝い、英編集部がルート66をロードトリップ

「親父がこんなクルマを持っていた」

初代フォードマスタングで目指す場所は、カリフォルニア州の西端にある小さな町、ニードルズ。日は傾き、クロームメッキを輝かせたトレーラートラックが一列に先を急ぐ。ここは、アメリカ経済の大動脈の1つだ。

1度白煙を履いたV型8気筒エンジンをいたわりながら、マスタングを1時間ほど進める。有名な壁画の前で撮影し、ロイズ・モーテル&カフェのネオンサイン点灯に合わせて、再び東のアンボーイへ戻る。

ロイズ・モーテル&カフェのネオンサインに照らされる、フォード・マスタング 289
ロイズ・モーテル&カフェのネオンサインに照らされる、フォード・マスタング 289

無事にフォトジェニックな1枚を撮り終え、暗闇の中を110kmほどさらに東へ進み、今晩の宿へ。フォトグラファーのマックス・エドレストンが、夜空の美しさに言葉を漏らす。トラックドライバーと並んで、夜を明かした。

キャリコは、20世紀初頭に放棄され、1950年代に復活した銀鉱山の街。西部開拓時代のテーマーパークのような景色を楽しめる。2人で、町の西にあるペギー・スー50’sダイナーで遅めの朝食。ホールスタッフは、ノスタルジックなウェアを着ていた。

英国なまりの英語を突っ込まれるかと思いきや、彼らが関心を示すのはマスタング。ガソリンスタンドでもそうだった。「良いクルマだな」「親父がこんなクルマを持っていたよ」とか、そんな言葉をもらう。60L入るガソリンタンクは、約400kmで空になる。

少し西のバーストーという街は、驚くほど混んでいた。ロサンゼルスやラスベガス、アリゾナなどへ向かう場合、多くの人がここを経由するからだ。

直進時も常にステアリングを細かく操る

ルート66は、南西のビクタービルという街まで、モハベ川に沿って続く。ロサンゼルスとの間には山脈があり、新しい高速道路15号線が、ルート66を部分的に拡幅する形で作られている。

高速域では、マスタングのステアリングの曖昧さがわかる。片側4車線もあるが、1車線の幅は狭い。直進するとしても、常にステアリングホイールを細かく操る必要がある。

フォード・マスタング 289(1964〜1965年/北米仕様)
フォード・マスタング 289(1964〜1965年/北米仕様)

小柄なボディはコンバーチブルで、ヘッドレストもない。前後左右の視認性は抜群にイイ。上半身が顕になったスタイルが、デザインされた時代を思い起こさせる。風へ常にさらされる。

1965年にラインオフした289エンジンのマスタングは、現代の長距離クルージングにも対応する。110km/hで、至って快適に走り続けられる。トップギアはロングで、サスペンションはしなやかだ。

遅いトレーラートラックの間を縫うように走るには、ある程度の勇気がいる。しかし、V8らしいドラムロールのようなサウンドへ浸れる。どんな人でも、笑顔にしてしまう体験だと思う。

南西へ進み、カホン峠で再びルート66は高速道路15号線と分岐。少し時間に追われていたわれわれは、もう少し進んでランチョクカモンガの街へ進むことにした。ドライブインでのランチもお目当てだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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