ルノー・日産・三菱共同発表の「行間」 リバランスされた株式相互保有 新たな「アライアンス」の行く先は?

公開 : 2023.02.07 17:05  更新 : 2023.02.07 19:54

協業は地理的戦略で 「上納金」は見直し

むしろ具体的な協業は、地理的戦略に集約された。

日産は日本と米国、中国。アセアンとオセアニアは三菱。欧州はルノー

ルノーは日産株の持ち分を15%に下げ、信託した23.4%分の議決権は中立化するが、手放すタイミングと判断については留保するため、配当金は受け取り続けられる。
ルノーは日産株の持ち分を15%に下げ、信託した23.4%分の議決権は中立化するが、手放すタイミングと判断については留保するため、配当金は受け取り続けられる。    日産

各社得意とする地域ごとのプレゼンスは保持しつつ、インドや中南米といった成長市場に協力して進出する。

ルノーはメキシコに日産のサポートの下、現地生産込みで進出する。アルゼンチンやコロンビアといった市場にも強いルノーだがボラティリティの高い地域なので、メキシコ進出はアメリカ市場への足掛かりというよりは中南米全体での収益を補強する意味合いと、ルカ・デ・メオ氏は説明する。

逆に日産は南米市場でルノーのサポートを受け、展開ラインナップを拡充する。三菱は米国市場で日産と協業を模索する。

いずれ電動化とソフトウェア定義型ヴィークル、自動運転における専門知識を集結させ、効率よく各地域で各社が独自に価値創造に取り組むことが、内田氏の説明するアライアンスの新しい取り組み方だ。

この辺りはスナール氏が以前に述べた「リーダー&フォロワー戦略」の残響が見てとれる。

とはいえ、各市場は異なるリズムで異なる規制ルールで推移し、顧客も同じペースではついてこない以上、3社が得意とする市場を確保しながら、柔軟に素早くフィットするしかないという危機感も垣間見える。

ところでルノーは日産株の持ち分を15%に下げ、信託した23.4%分の議決権は中立化するが、手放すタイミングと判断については留保するため、配当金は受け取り続けられる。

ただ日産が配当金をどのぐらいにするかといった経営判断に関わらなくなるため、ゴーン時代にルノーの収益を一時は支え過ぎていると批判された、悪名高き「上納金」で潤うことはできなくなる。

またアンペアと分けて「ホース」の名の下に集約されるICE事業にはジーリーが参画するが、ルカ・デ・メオ氏は欧州でICEが将来的に無くなる以上、韓国ルノーサムスンの工場でジーリーとプロジェクトを進めざるを得ないことを認めた。

内田氏も、ICEの知財について細かい取り決めをした訳ではなく、アンペアでもホースでもあらゆる新しいプロジェクトに用意はできていると述べる。

もっとも、新しいアライアンス体制の中でチャレンジャーとしてレバレッジを効かせなければならないのは日産かもしれない。

インド市場の立て直しに加え日米欧といった先進国市場でも後退し、昨年のグローバル販売台数は前年比の半分近くまで落ち込んだが、円安に助けられた側面がある。

内田氏の強調し続けた、新しいマインドセットでもって、3社アライアンスのパートナーシップの価値を知らしめることがどのように実現されていくか。それは外部というより、内部に向けられたメッセージにも聞こえた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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