新型マセラティ・グラントゥーリズモ 大谷達也が試乗 トロフェオ/フォルゴーレの2種

公開 : 2023.05.06 05:45

続いてフォルゴーレに試乗

続いてフォルゴーレに試乗する。

このマセラティ初のEVが3モーター方式を採用していることは前述のとおり。

グラントゥーリズモ・フォルゴーレ
グラントゥーリズモ・フォルゴーレ    マセラティ

ちなみにモーター1基あたりの最高出力は400psなので合計すれば1200psとなるが、バッテリー出力の都合もあり、継続的にモーターが発揮できるパワーは760psが上限とされている。もっとも、バッテリーの出力以上にモーターの最高出力を高く設定したのは、モーター・トルクベクタリングを実現する兼ね合いから当然といえるだろう。

フォルゴーレでもう1つ興味深いのは、バッテリーをフロア下に広く敷き詰めるのではなく、センタートンネル内部に収めた点にある。

これは、エンジン車とプラットフォームを共用している事情からやむを得ないものでもあるが、センタートンネル内にバッテリーを高く積み上げたことがハンドリング面でポジティブな効果を生み出すとの説明があった。

これがなにかといえば、荷重移動が起きやすくなることにある。

フロア下にバッテリーを敷き詰めた既存のEVは重心が極端に低いため、通常のエンジン車で経験する荷重移動が置きにくく、これがコーナリング時にある種の違和感を生み出していた。

しかし、フォルゴーレは一定の範囲で荷重移動が起きるため、より自然なドライビングフィールが味わえるとマセラティは考えているのだ。

この点は、ワインディングロードを走って、はっきりと体験できた。これまで、スポーツタイプのEVでワインディングロードを走っても、どこにコーナリング限界があるのかわかりにくかったが、フォルゴーレは接地感の変化によりコーナリング限界を掴むのが容易で、とても安心してドライビングを楽しめた。

いっぽうのトルクベクタリングは、あくまでも自然で控えめな設定のため、今回は体感できなかったものの、ウエットコンディションやサーキット走行などで遺憾なく効果を発揮するという。

いずれにせよ、ドライバーをむやみに急かすことなく、ロングクルージングを楽しむのもコーナーを攻めるのも得意という点では、フォルゴーレもトロフェオとまったく同じ。

そして、これこそがマセラティ・グラントゥーリズモの本質であることは間違いないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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