【口角が上がった?】スズキ・ワゴンRスマイルのデザイナーに聞く、可愛さのブースト方法!

公開 : 2025.06.16 10:45

スズキは昨年末、『ワゴンRスマイル』を商品改良しました。その方向性は『可愛いをブースト』だといいます。内田俊一が開発責任者とデザイナーにその思いを聞きました。

誰が見ても可愛いと思うように

スズキは『ワゴンRスマイル』を商品改良。その方向性は『可愛いをブースト』だという。そこで開発責任者とデザイナーにその思いを聞いた。

今回の改良では、ナチュラルで程良い個性がある優しい可愛さを追求したデザインを求め、ナチュラルユニークをコンセプトにした。その背景について、開発責任者であるチーフエンジニアの高橋正志さんはこう語っている。

ワゴンRスマイルのスタイリングを担当した長谷川尚実さん(左)とCMFを担当した山下百香さん。
ワゴンRスマイルのスタイリングを担当した長谷川尚実さん(左)とCMFを担当した山下百香さん。    内田俊一

スペーシアは背が高くて運転しにくい感じがするという声があったことから、背のそれほど高くないスライドドア車のワゴンRスマイルは、男性にも購入されるだろうと考えていました」

しかし、購入者のほとんどが女性だった。

「男性はおそらくスペーシアカスタムなど、立派で豪華で格好良い方向だったのですね。よくよく考えると、そういうコメントの多くは女性なんです。ですから圧倒的に女性に売れました」

そしてそういったユーザーから、「もっと可愛く、はっきりした色ではなく淡い色、パステル系、くすみ系が欲しいという声が予想以上にありました」。

そこで高橋さんはデザインチームに、「好き嫌いはあってもいいが、誰が見てもまず可愛いと思うようにしてほしい。可愛くないよねとは言われないようにしよう」と要望を出すとともに、女性をメインターゲットに据えた。

ナチュラルさとユニークさ

ではデザインチームはどう対応したのか。スタイリングを担当した長谷川尚実さんはこのように話す。

「スマイルという名前がついていますから、ちょっと笑っているような自然な表情を取り入れたい。そうするとナチュラルさも出てきます。そして笑っている顔はやはり可愛いですよね。それがポイントになってるかなと思います。

メッキを一部切ってCの字にするなどして。柔らかい印象、ナチュラル感を表現している。
メッキを一部切ってCの字にするなどして。柔らかい印象、ナチュラル感を表現している。    内田俊一

ランプまわりやグリルにメッキが多く若干印象が強いという意見もありましたので、メッキを一部切ってCの字にして、グリル上部をボディ同色にすることで伸びやかさとともに柔らかい印象、ナチュラル感を表現しています」

ただし可愛いいを突き詰めると子供っぽくチャーミングになり過ぎてしまう。

「数を減らしてポイントでメッキを使っています。女性がイヤリングやピアスなどの光り物を取り入れることでおしゃれさを演出するイメージです」

同時にロアグリルの形状や内側へ向かう角度なども見直され、口角の上がった印象を持たせている。これがユニークさにもつながっている。

新色のトープグレージュを採用

ボディカラーでは新色のトープグレージュを採用している。CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)を担当した山下百香さんは以下のように話す。

「ただのグレーでもベージュでもない、程よく個性を感じるような、だけどナチュラルで使いやすくてというイメージを追い求めて、少し紫がかったような上品さを感じるようなグレーを採用しました」

昨年商品改良を受けたスズキ・ワゴンRスマイル。こちらが新色のトープグレージュ。
昨年商品改良を受けたスズキ・ワゴンRスマイル。こちらが新色のトープグレージュ。    内田俊一

さらにこのカラーをボディに選びソフトベージュをルーフに、あるいはその逆で組み合わせることも可能だ。また、インテリアでは助手席前方パネルのカラーが変更された。まずリフレクショングレーについて山下さんはこのように話す。

「光が当たるとゴールドの粒子がキラキラ光って、少し偏光します。ナチュラルでありながらこだわりがあって、個性が感じられる色。それとカッパーのアクセントを合わせて個性を感じるように目指しました」

そしてモスブルーはカッパーではなくシルバー加飾と組み合わされる。

「少しスモーキーなブルーなので、マニッシュな少しクールな可愛さをカバーできると思います。この2色のパネルで幅広いお客様に訴求できるようにしました」

改良前のワゴンRスマイルは、可愛さはあるもののヘッドライトの印象がきつく、少々ギョロ目のようなイメージを抱いていたが、今回の変更を受け大きく印象が変わった。

フェンダーはキャリーオーバーしながら、ロアグリルの変更によりそこへ向かうラインの修正が行われ、非常にうまくいっているように見える。女性に向けたナチュラルな可愛さを市場がどう受け止めるか期待したい。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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