運転を味わえる気兼ねなさ ホンダ・シビック 長期テスト(最終) 日本車らしい強み

公開 : 2023.07.08 09:45

SUV人気で従来的なハッチバックは減少傾向。ホンダの意欲作はその流れに一石を投じるのか。英国編集部が実力を確かめます。

積算1万3563km ジェレミー・クラークソンも絶賛

最近の欧州では、これまでの定番といえた、フォルクスワーゲン・ゴルフのようなファミリー・ハッチバックを選ぶ人が減少している。新しいホンダシビックは、そんな傾向へ一石を投じる可能性を持っている、と筆者は考えてきた。

長期テストで数か月をともにしてきたが、その考えは正しかったと思う。ハッチバックには逆風が吹いている。それでも、風上へ向かって進むことは不可能ではないようだ。

ホンダ・シビック 2.0 i-MMD e:HEV アドバンス(英国仕様)
ホンダ・シビック 2.0 i-MMD e:HEV アドバンス(英国仕様)

非常に珍しいことに、ベーシックなモデルでありながら、AUTOCARのスタッフからも多くの好感を集めた。恐らくクロスオーバーやSUVではない、ということも影響しているはず。とはいえ、そもそも素性が素晴らしくなければ難しいだろう。

長期テストでやってきたクルマを同僚へ貸すと、乗り慣れていないことも起因して、否定的なコメントとともに返されることが少なくない。オーナーになれば、さほど気にならないような部分でも。だが、シビックではそんなことは一度もなかった。

ハイブリッド・モデルへ懐疑的な、アマゾン・グランドツアーでお馴染みのジェレミー・クラークソン氏ですら、新しいシビックを絶賛している。英国のサンデー・タイムズ紙のコラムで。これも珍しいことだと思う。

筆者がシビックで最も印象に残っている特長は、気使いのいらない素直な個性。これまで約9000kmの距離を重ねてきたが、最後まで好ましい印象のままだった。

運転の楽しさを味わえる気兼ねなさ

確かに現代的なモデルは、全般的に余計な気使いを減らそうとしている。最新のバッテリーEVなどでは、キーを身に着けていればスタートボタンを押す必要がない例もある。

しかし、シビックの真骨頂といえるのが、気兼ねなさがずっと続くこと。操作しやすいインフォテインメント・システムは素早く起動し、アップル・カープレイは当たり前のようにスマートフォンと接続。シートは座り心地に優れ、運転へ自然に集中できる。

ホンダ・シビック 2.0 i-MMD e:HEV アドバンス(英国仕様)
ホンダ・シビック 2.0 i-MMD e:HEV アドバンス(英国仕様)

車内のパッケージングが秀抜な結果といえる。ステアリングホイールには押しやすいボタンが備わり、運転中でも目線をそらさず電話へ出られる。エアコンの操作パネルには、位置を覚えやすく実感を得やすいボタンやノブが並んでいる。

これは、運転環境として重要だといっていい。シビックに乗っていると、余計なアレコレで気が散ることは殆どない。日常的な移動が安楽になる。

同時に、運転の楽しさをしっかり味わえることも意味する。筆者は高速道路で往復300km近い遠距離通勤をしているが、洗練された印象のまま快適にこなせた。

郊外の一般道へ足を伸ばせば、磨かれたシャシーが光った。エンジン音がスポーツカーのようになるモードもあるが、デフォルト状態でも充分に小気味いい。

サスペンションの衝撃吸収性は優秀で、ホイールの動きを巧みに制御。高水準な技術が投入されているという事実を体感できた。車重が重すぎないことも貢献し、乗り心地に不満を抱くことはなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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