「楽しさと危険」は表裏一体 プジョー205 vs シトロエンAX(1) フランス版ミニ・クーパー

公開 : 2023.12.23 17:45

シリアスなラリー・ホモロゲーション・マシン

AXは1991年にフェイスリフトを受け、環境規制に合わせて触媒コンバーターを導入。ツインキャブからインジェクションへ、アップデートされている。その時に投入されたAX GTiには、100psの最高出力が与えられた。

AXのバリエーションは数え切れないほど多いが、1992年から1994年にかけては、四輪駆動のピステルージュ4WD 1400も投入されている。その開発には、フランスのダンゲル社が関わっていた。

シトロエンAX GT(1988〜1992年/英国仕様)
シトロエンAX GT(1988〜1992年/英国仕様)

その後、AXは1991年に発表されたプジョー205の後継車、106の兄弟モデルとして統合。シトロエン・サクソへモデルチェンジされている。

一方で、プジョー205 ラリーが投入されたのは1987年。英国仕様の場合、AX GTへ近いエンジンが載っていたが、ブロックはスチール製。最高出力も、欧州仕様より10ps低かった。

基本的には、スポーティなホイールとトリコロールのストライプで仕立てられた、205 XTといって良かった。ドイツ仕様では1.9Lと、また別のエンジンを積んでいた。

しかし、それ以外の市場には本物の205 ラリーが投入された。ツイン・ソレックスキャブレターは、後にウェーバーへ変更されるが、アルミニウム製ブロックを採用した4気筒エンジンの排気量は1294cc。ベースとなったのは、TU24ユニットだ。

75x73.2mmのボアストローク比を持ち、6800rpmで103psの最高出力を叶えていた。ブレーキとサスペンションは、1.6 GTIからの流用。シリアスな、ラリー・ホモロゲーション・マシンだった。

適切なパワーオンも不可欠なバランス

インテリアからは無駄が省かれ、ナンセンスではないほどに質素。シートも1.6 GTIと同じアイテムだが、軽量な専用カバーが表面を覆う。メーターは可読性の良いイエーガー社製で、サイドウインドウの上下は手動。重くなるラジオは省かれている。

歴代のプジョーで最高のホットハッチといえば、205 1.6 GTIかもしれない。117psの最高出力に、900kgの車重。パワーウエイトレシオは129ps/tと、頼もしい数字が並んでいる。

プジョー205 ラリー(1987〜1992年/英国仕様)
プジョー205 ラリー(1987〜1992年/英国仕様)

対する205 ラリーは、103psとパワーは劣るものの、車重は790kgと軽量。130ps/tと、僅かに勝る。

パワーの発生プロセスも、より熱狂的。ほぼ瞬間的にフロントノーズは向きを変え、確かなフロントタイヤのグリップで、一層鋭く加速する。

リアアクスルには、パッシブ・リアステアを叶えるべく、巧妙にラバーブッシュが組み合わされている。コーナーの入り口でテールにきっかけを与えるか、アクセルペダルを緩めれば、ステアリングホイールの操作は最小限で済む。

右足の加減で、ニュートラルへ戻すことも、オーバーステアへ持ち込むことも自在。リアタイヤが、積極的にコーナリングを助けてくれる。FFになった、2代目ロータスエラン M100の挙動にも似ているが、よりスムーズだ。

ただし、その姿勢変化を抑えるために、適切なパワーオンも不可欠。濡れたヘアピンで急にアクセルペダルを戻すと、予想外にテールが流れる可能性はある。少し速度域の高いカーブでは、内側のリアタイヤが浮き上がることも珍しくない。

この続きは、プジョー205 vs シトロエンAX 比較試乗(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ポール・ハーディマン

    Paul Hardiman

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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