新旧の甘辛ミックス トールマン205 GTi ヒョンデi20 N 期待通りのホットハッチか?(1)

公開 : 2023.11.11 09:45

往年のホットハッチ、プジョー205 GTiをレストモッドしたトールマン 現在のラリーで存在感を高めるヒョンデ 英国編集部が比較試乗で実力へ迫る

より自由で無邪気だった時代のクルマ

秋は少しノスタルジック。不可逆的な時間の流れに対し、感傷的な気持ちを抱きやすくなる。最近は、そんな傾向が強いように思う。世界的に、ひと昔前へ回帰したようなファッションや音楽が流行している。日本でも、何かと「昭和」が話題に登る。

特にクルマ好きは、そんな感情が強いのではないだろうか。気候変動へ対応するべく、バッテリーEVへのシフトは急進的に進んでいる。多くのドライバーが、より自由で無邪気だった時代のクルマを懐かしんでいるようだ。

レッドのトールマン・エディション205 GTiと、ホワイトのヒョンデi20 N
レッドのトールマン・エディション205 GTiと、ホワイトのヒョンデi20 N

ガソリンを燃やすことが現代ほど問題視されなかった頃、道路はもっとおおらかで、未来は明るく感じられた。そんな1980年代や1990年代のモダンクラシックは、日に日に価値を高めている。

レストモッドで、現代的な性能を与えようと考える人も少なくない。美しくレストアしつつ、望ましい水準へチューニングし、レトロな魅力を残しながらモダンな走りへ浸るために。

実際のところ、今から30年も昔のクルマの走りが、期待を上回ることは少ない。ノスタルジックな気持ちが、イメージを大きく膨らませている。当時の技術で多くの顧客をターゲットに量産された、という事実からは逃れられない。

大金を投じ、相当に大胆なレストモッドを手掛けるガレージもあるが、古いものと新しいものをバランス良く調和させるのが得意なところもある。その1社が、グレートブリテン島の中部、ウォリックシャー州に拠点を置くトールマン・エンジニアリングだ。

手を加える必要性を感じない205のデザイン

彼らは、クラシック・ホットハッチの個性的な見た目や特徴、感覚を残しつつ、現代的な雰囲気や上質さを融合させることを、レストモッドのコンセプトに掲げている。日常的な利用にも対応する、特別なクルマを仕上げている。

今回ご紹介するトールマン・エディション205 GTiも、その1台。果たして、21世紀のホットハッチに並ぶ楽しさや親しみやすさは備わるのだろうか。それを確かめるべく、このクラスの精鋭、FFのヒョンデi20 Nをウォリックシャー州へ持ち込んでみた。

トールマン・エディション205 GTi(英国仕様)
トールマン・エディション205 GTi(英国仕様)

レストモッドの結果、プジョー205 GTiの最高出力は高められ、2台とも約200馬力で並ぶ。0-100km/h加速も7.0秒を切る。最高速度は220km/hを超える。動力性能は不思議なほど拮抗している。

いつもの比較テストと趣向は違う。それでも、成り立ちの異なる新旧のホットハッチを比べることは、間違いなく興味深い。トールマン社の実力も、掘り下げられるはず。

まずは見た目から。トールマン205 GTiは、当時のままの容姿を見事に保っている。野暮な追加パーツは一切ない。レストアとして、完璧な内容といえる。

誕生から40年を経ても、205のデザインは素晴らしい。ピニンファリーナが描き出したボディラインは、手を加える必要性を感じさせない。

実際、現役時代の10年間、殆ど姿は変わらなかった。途中のフェイスリフトで、テールライトへ少し手が加えられた程度だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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