【非電化路線に水素を】欧州トヨタ ゼロ・エミッション列車に燃料電池モジュール提供

公開 : 2021.04.08 06:05  更新 : 2022.11.01 08:41

欧州の燃料電池列車プロジェクトに、トヨタのFCV技術が活用されます。ディーゼル列車の代替を目指します。

燃料電池とバッテリーのハイブリッド

text:Takuya Hayashi(林 汰久也)

燃料電池列車の開発を目指す欧州のFCH2RAIL(フューエルセル・ハイブリッド・パワーパック・フォー・レイル・アプリケーションズ)に参加するトヨタは、同プロジェクトに燃料電池モジュールを供給すると発表した。

トヨタによると、欧州では鉄道路線のほぼ半分が電化されており、局所的なエミッション・フリーの鉄道輸送が可能となっているという。しかし、その他の路線ではディーゼルエンジンを搭載した列車が使用されており、これを水素燃料電池とバッテリーによるハイブリッド駆動システムに置き換えることで、さらなるグリーン化を目指すというものだ。

トヨタの燃料電池モジュール(横型)
トヨタの燃料電池モジュール(横型)    トヨタ

FCH2RAILでは、ベルギー、ドイツ、スペイン、ポルトガルからなるコンソーシアムが、新しいゼロ・エミッション列車のプロトタイプの開発と試験を行っている。このプロジェクトは1月に開始されており、その最初の成果として、プロトタイプのルートと運用シナリオが定義されている。

架線がある場合は、列車は架線からエネルギーを得る。架線がない場合は、「フューエルセル・ハイブリッド・パワーパック」と呼ばれる燃料電池とバッテリーのシステムからエネルギーを得る。

ディーゼルに代わる選択肢

プロジェクトリーダーであるドイツ航空宇宙センター車両コンセプト研究所(DLR)のホルガー・ディトゥス研究員は、「この種のバイモード列車が、ディーゼル列車に代わる競争力のある、環境に優しい選択肢であることを示したい」と述べている。

すでにバッテリー駆動の列車もあるが、路線の状況や外気温に左右されるため、運行範囲が30~70kmに限られている。また、現在のディーゼル列車は、架線からエネルギーを得て電気モーターで駆動する車両に比べて、最高速度や加速力の面で性能が劣る。

トヨタ・ミライ
トヨタ・ミライ

スペインの鉄道車両メーカーであるCAF社のテクニカル・プロジェクト・マネージャー、セルジオ・ガスコンはこのプロジェクトの目的について次のように述べている。

「わたし達のバイモーダル・ハイブリッド燃料電池システムは、両方の技術の利点を兼ね備えています。これにより、鉄道輸送をより持続可能でエネルギー効率の高いものにすることができます」

欧州では電化が困難な場所における動力源の1つとして、水素に注目が集まっている。水素燃料電池とバッテリーによるハイブリッドシステムは、旅客輸送と貨物輸送の両方で使用するよう設計できるという。このプロジェクトでは、今後4年以内に1400万ユーロ(約18億円)をかけて、システムの開発・実証・承認を目指している。

CAFが製造した通勤用電車CIVIAを改造し、フューエルセル・ハイブリッド・パワーパックを搭載して試験を行うことが計画されている。車両はスペインの国営鉄道会社であるレンフェが提供し、燃料電池システムは、トヨタ製のパッケージ型燃料電池システムモジュールを中心に、CAFがバッテリーとコンバーターを提供する。

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