【グリル生かしたブランド構築】メルセデスに「パナメリカーナ」増えたワケ

公開 : 2021.04.08 05:45  更新 : 2021.10.13 12:04

パナメリカーナグリルのメルセデスが増えています。AMGモデルの象徴的役割をグリルが担っています。

「パナメリカーナ」レースが根源

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

パナメリカーナグリルが増えている。

街を走るメルセデス・ベンツを見てそう感じたことはないだろうか。

メルセデスAMG GT R
メルセデスAMG GT R

パナメリカーナグリルとは、メルセデス・ベンツの車両に用いられる、垂直ルーバーが特徴的なフロントグリルのデザインのこと。

ルーツは、メキシコで開催された「パナメリカーナ・ロードレース」の参戦車両だ。1952年にそこで優勝した300SLのレーシングカーのグリルのデザインがモチーフになっている。

ちなみにパナメリカーナ・ロードレースとは、1950年から1955年まで開催された公道レース。

メキシコ政府のバックアップのもとに開催され、メキシコを縦断するコースは総延長3000kmを超える。標高3000mを超えるような山岳区間や未舗装路もあるそのルートを5日間かけて走破るレースだ。

区間ごとに時間制限があり、各ステージの合計タイムで順位がつけられた、ラリーに近い競技だった。

はじまったきっかけはアメリカ大陸縦断道路である「パンアメリカンハイウェイ」のメキシコ国内部分が完成したことを記念するイベントで、各自動車メーカーが参加。

キャデラックやリンカーンなど北米メーカーに加え、メルセデス・ベンツのほかフェラーリポルシェなどの欧州勢も参加。専用開発されたレーシングカーが公道を走る、大胆なイベントだった。

レースの正式名称は「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」で、ポルシェ911の「カレラ」というネーミングもこのレースからとったもの。

さらに同社の「パナメーラ」もこのレースの名称が由来となっている。そのくらい偉大なイベントだったのだ。

メルセデスAMGに採用される

話をメルセデス・ベンツに戻そう。

パナメリカーナグリルが採用されるのは、メルセデス・ベンツのなかでも超高性能モデルの「AMG」のみだ。「AMG GT」を頂点とする市販モデルは「メルセデスAMG」というサブブランドのもとで、「究極のハイパフォーマンスを追求するモデル」と位置づけられている。

メルセデスAMG GLB 35
メルセデスAMG GLB 35

半世紀以上ぶりにパナメリカーナグリルが復活した市販モデルは、日本では2017年6月に発売された「メルセデスAMG GT R」。

「公道走行可能なレーシングモデル」として、メルセデスAMG GTをベースにさらなるポテンシャルアップしたモデルである。その顔にパナメリカーナグリルが組み込まれたのだ。

それを皮切りに、パナメリカーナグリルはメルセデスAMGの各車に展開し拡大。今では、日本においてはパナメリカーナグリルが設定されていないAMGモデルは「SL」、「CLSクーペ」、「SLC」、「Aクラス・セダン」のみとなっている。

「SL」と「CLSクーペ」はタイミングの問題で、「SL」はモデルチェンジ、「CLSクーペ」に関してはマイナーチェンジのタイミングで採用されることになるだろう。

「SLC」は次期モデルが予定されていないので、このまま終了となる。

一方、「Aクラス・セダン」にパナメリカーナグリルの採用がない理由は、Aクラス系のモデルはSUVを除き「35」系にはパナメリカーナグリルを組み合わせないから。

現時点では、より高性能な「45 S」系だけパナメリカーナグリルとなる法則にもとづいている。

ただしこの法則はあくまで現時点のものであり、後に登場した「GLA」や「GLB」などSUVモデルはAクラス系ながら「45 S」だけでなく「35」でもパナメリカーナグリルを組み合わせる。

だから、マイナーチェンジなどどこかのタイミングで変わるかもしれない。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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