スポーツカーの理想像 トヨタGT86(86) 世代交代後も過去10年のベスト お手頃ドライバーズカー選手権(4)

公開 : 2022.11.13 08:26

気張らない価格で買える、最も運転を楽しめる1台を選ぶAUTOCAR恒例企画。2022年は趣向を変えて、過去10年の1番を選出しました。

走行距離8万kmでもタイトなフィーリング

初代トヨタGT86(86)は、2012年のお手頃ドライバーズカーへ選ばれ、年末の恒例企画、ベスト・ドライバーズカー選手権に進出。アストン マーティンヴァンキッシュロータスエキシージメルセデス・ベンツ C 63 AMGなどとしのぎを削った。

数台のポルシェとも直接比較された。果たして最高出力200psの小さなフロントエンジン・リアドライブのクーペは、装備も価格も遥かに上回る相手へ見事な勝利を収めた。

ホワイトのトヨタGRヤリス・サーキットパッケージと、トヨタGT86(86) プロパッケージ
ホワイトのトヨタGRヤリス・サーキットパッケージと、トヨタGT86(86) プロパッケージ

2022年に再びトヨタ86を運転できて、とても清々しい。今回の審査員、誰もが同じ気持ちなようだ。お借りしたホワイトの86は走行距離が8万kmを超えていたが、とてもタイトなフィーリングでうれしくなった。

6速MTのシフトレバーやステアリングホイール、サスペンションのブッシュ類は確かに馴染みが出ているものの、4万kmだと聞いても疑わないだろう。シャシーはロードスターより明確に機敏で、勢い良くフロントノーズがコーナーへ吸い込まれる。

足まわりは路面へ追従し、姿勢制御も引き締まっているが、乗り心地に不満を感じることはほぼ皆無。自然吸気の2.0L水平対向4気筒エンジンはやや実務的だが、魂が宿っているように熱心に回る。

低いドライビングポジションは、世界トップクラス。リアアクスルの上にお尻が位置するようにも感じる。

まさに充足感に満ちたドライビング体験

グレートブリテン島の西部、ウェールズ地方のカーブが連続する道を、トヨタ86は鮮鋭に駆け抜ける。FK8型のシビック・タイプ Rに迫る充足感で。クルマとの深い一体感が伴い、路面を一緒に流れていくような気持ちになれる。

コーナーが接近したら、ブリッピングしながらシフトダウン。ノーズがフラットに旋回し始めるのと同時に、徐々に重心がボディのリア寄り外側へシフトしていく。ラインとノーズの向きを整えながら、頂点を通過。次のストレート目掛けての加速が始まる。

トヨタGT86(86) プロパッケージ(ZN6型/2012〜2021年/英国仕様)
トヨタGT86(86) プロパッケージ(ZN6型/2012〜2021年/英国仕様)

フォードフィエスタ STと同じく、最高出力は200psだからパワーに余剰はない。さらに自然吸気だから、エンジンの回転数を維持し続ける必要もあるが、それがまたイイ。

充足感に満ちたドライビングとは、まさにこんな体験のことだと思う。トヨタ86はタイトだが、過度に張り詰めてはいない。お手頃なスポーツカーの理想像に、限りなく近いといえる。

2012年のトヨタ86は、衝撃をもたらすゲームチェンジャーだった。2022年でも、同じことがいえそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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