オーバーステアか四輪ドリフトか プジョー205 vs シトロエンAX(2) 平凡な小型車から最高の面白さ

公開 : 2023.12.23 17:46

1980年代に黄金期を迎えた、小さなホットハッチ ホモロゲーション仕様のプジョー205 ラリー 軽さを追求したシトロエンAX GT 英国編集部が比較試乗

シトロエンの哲学が色濃く反映したシャシー

プジョー205 ラリーは、ステアリングホイールの感触が素晴らしい。フロントタイヤと、しっかりコミュニケーションを取れる。タイヤサイズは、13インチの185/60。荷重移動で小さくなる接地面積を、ラバーの幅で稼いでいる。

当初、フォード・エスコート Mk2を探していたというニック・ベイリー氏は、多くの時間を費やした結果として、この205 ラリーを選んだという。「車両価格は上昇の一途で、売りに出るとすぐに買い手が決まるような状況でした」

ホワイトのプジョー205 ラリーと、ガンメタリックのシトロエンAX GT
ホワイトのプジョー205 ラリーと、ガンメタリックのシトロエンAX GT

「かなり珍しいクルマです。車両代と整備費用を含めると、1万2000ポンド(約222万円)以上は掛かりましたね」。と、これまでを説明する。

オーバーフェンダーで拡幅されたホイールアーチに、ホワイトでワイドなスチールホイールが映える。低く構えたスタンスが、活発な走りをイメージさせる。

プジョーは、205 ラリーを3万台以上生産した。このクルマには、ディーラー・オプションのサンルーフが付いている。シリアスさから一歩引いた性格のおかげで、多くの例のように廃車から免れたのかもしれない。

かたや、シトロエンAX GTの1360cc 4気筒が発揮する最高出力は86ps。パワーウエイトレシオは205 ラリーへ遠く及ばないが、幅が165という細身のタイヤが、楽しい走りを生み出す。

サスペンション・スプリングは驚くほどソフトで、長いストロークを活かし、路面へしっかり追従。シトロエンの哲学が、色濃く反映している。インテリアのデザインは、少しおもちゃっぽい。

205 ラリーと同じくらい速いAX GT

思い切りコーナーへ突っ込んでも、内側のリアタイヤは205 ラリーのように浮き上がることはない。急にアクセルペダルを緩めると、テールが流れるオーバーステアではなく、四輪ドリフトへ転じる傾向がある。

ブレーキペダルの踏み心地にはコシがない。シフトレバーの操作感も、205 ラリーへ及ばない。それでも、シャシーのコミュニケーション力は同様に高い。小さなタコメーターの針を目一杯回せば、AX GTは同じくらい速い。レッドラインは7000rpmからだ。

シトロエンAX GT(1988〜1992年/英国仕様)
シトロエンAX GT(1988〜1992年/英国仕様)

ガンメタリックのAX GTのオーナーは、マシュー・ホッキング氏。数年前に、極上コンディションの1台を発見でき、非常に幸運だったと振り返る。ほぼオリジナルのままで、テールライト以外、目立った作業は必要なかったという。

「当初は、状態を維持するために購入を決めたのですが、走りの魅力へすっかり惹き込まれてしまいました」。とマシューが笑う。初期型でリアスポイラーが付いていないが、6000ポンドがお買い得だったことは間違いないだろう。

ストックカーレースのレーサーとして活躍し、フランス車マニアでもある彼は、1960年代から1990年代のシトロエンの大ファン。ホイールボルトが3本、ワイパーが1本というミニマリスティックな装備で、AX GTは一層の軽量化を叶えていると指摘する。

スチールホイールが標準だが、アルミホイールは当時の純正オプション。AXにはドアハンドルがなく、ドア横のクビレへ手を入れて、ラッチを外して開く。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ポール・ハーディマン

    Paul Hardiman

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

プジョー205 vs シトロエンAX 比較試乗の前後関係

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