社会人1年目、ポルシェを買う。

2016.12.07

第42話:ドライビング特訓 with マツダ編。2

photo:佐藤正勝 (Masakatsu Sato)

 

前半は、さほど速度の出ないコースの競技だったが、
後半は、いよいよ筑波サーキットの本コースを走る。

総距離は2054m。コース幅は10〜17m。
ホーム・ストレッチとバック・ストレッチが
それぞれ282mと437mしかない一方で
各コーナーにかなりのカントが与えられるため
‘ドライバーのスキルがものを言うレイアウト’
とガイドに書かれている。いきなりプレッシャーだ。

と、その前にお昼ごはん。
なんとかのソテーとかパスタとかピラフとかエビチリとか
いわゆるビュッフェである。

カワナさんに板金のお金をいまだに分割で払っている
わたしにとっては至福のぜいたくだ。
たっぷりといただく。おいしい!

で、走行。

そもそもヘルメットなんて、
小さいときに父のものを遊びでかぶっていた以来だ。
かなりまごつく。
かぶる角度によってインナーがズレて視界を覆うし、
かぶったあとのメガネの掛けかたもわからないし……。
これはけっこう恥ずかしい。

なんとか準備を済ませて、
まずはレーサーの関豊さんがドライブする
GLOBAL MX-5 CUP Carの助手席に乗った。

乗るといっても、
ロールケージが張り巡らされたキャビンに
体をねじ込ませるといったかんじ。
小学生のときによく遊んだジャングルジムを思いだす。

シートの彫りも深い。ヘルメットを被っているから
ハーネスの装着もひと苦労。係の人につけてもらった。

 

ふだん体をゆっくりと動かせば伸縮する
シート・ベルトに慣れているため、
ちょっと後ろをふり返ることもできない。
これがほんとうに怖い。しかたない。

エンジンがONになるとバラバラというエンジン音が
カーペットを剥ぎ取ったフロアから、直接つたわる。

関さん:サーキットは初めてですか?
僕:はい。
関さん:わっかりました〜。

真意が読めない質疑応答は怖い。
とにかくぜんぶ怖い。いざ出発。

 

徐々にペースがあがっていく。
コーナー手前(といってもかなり奥)、
いけるところまでアクセルを踏み切り、
ドッカン! とブレーキを踏んで
パン!パン!パン! とリズミカルにダウン・シフト。

 

周回を重ねるたびに、
ブレーキングのタイミングを遅くする以外は、
正確無比そのもの。人間が操っているというより、
ロボットが操縦しているみたいだった。

第1コーナーをすぎて、ゆるいS字のあとにくる
第1ヘアピン。3ラップ目からあとは、
あきらかに後輪がすべっている。

 

下半身からすくわれるようなヌルっという感覚が
薄いシートを介して、お尻に伝わってくる。
単にヌルっとしているだけならいいのだけど、
かすかにズッズッズっといった振動もまざる。
鳥肌がたつような、ゾクッとする怖さだ。

 

合計6ラップ程度を全開で走ったのだろうか。
後半は、もうどうにでもなれと思った。
そう思った瞬間に気分が楽になって、
それ以降のことはあんまり覚えていない。

周回を終えるとマサカツ・フォトグラファーが
「太朗よ、おまえ余裕あったなぁ〜、
 終盤はぜんぶカメラ目線だったよ」と
拡大画面を見せてくれたけれど、
これ、違うんです。意識がうすれて、
たんに首が外を向いていただけで、
どこも見ていない結果、撮れた写真だったのです。

 

 

 

上の写真は、走行後にマサカツさんが撮ってくれた写真。
カメラが向いていることがわかったので、
なにかそれっぽいことをしなきゃ! と思ってとったポーズ。

会話は、
僕:オート・ブリッピング機能ついてるんですか?
(ケイマンGT4で体験ばかりだからね……)
関さん:いや、そんなのついてないですよ。

以上、終了。そんなかんじでありました。

降りるとアシは震えていたし、服は汗でビショビショだし、
いろんな感情と、エビチリがこみ上げてきました。
こっそりトイレに駆け込んだからバレてないと思っていたら
とある広報のお姉さんが「上野さん、大丈夫?
大丈夫じゃないよね?(笑)」と声を掛けてくれました。

 

いよいよロードスター・パーティレース仕様車で
本格的なサーキット・デビュー。

先ほどの関さんの運転でもっとも感心したのは、
ブレーキングだった。
文字どおりペダルを踏みつけるような強さで、
いままでの僕のブレーキングは
ものすごく甘っちょろいと思えるものだった。

色々やろうとしてもできっこないので、
ブレーキをしっかり踏むことと、
編集長とのレッスンのときに教えてもらった
‘ノーズをうちに向けることを意識しながら曲がる’
という2点だけに絞って走ることにした。

まだ、間に合う、まだ、間に合う、と言い聞かせて
少しずつブレーキを遅らせる代わりに、
思い切って踏み込んでみると次第にメリハリもでてくる。

で、アクセルを踏む力とタイミングを調整したところ、
あまりに早すぎて、お尻がズルっとなるときがあった。

反射的にステアリングをコーナーとは反対側に切る。
ここですごいなぁと思ったのは、
あっ! と思って反射的にやったにもかかわらず、
ロードスターはちゃんと思った方向に動いてくれた点。

ドライバーが望む以上のことをやってくれたり、
望んでいることと実際の動きに ‘時差’ があるクルマに
以前乗ったことがあったけれど、
ロードスターはまったくもって ‘思ったとおり’ に
動いてくれた。ごく自然に。

 

と、僕が自分自身の走りに語れるのはこれが限界。
もっとかっこいいことが書ければいいのですが……
ごめんなさい。

1年のほとんどをサーキットで撮影している
マサカツ・カメラマンに意見を聞いたところ
「ちゃんと前荷重のコーナリングになってたよ
 もっと、とっ散らかるかと思ってたんだけどな〜
 残念だなぁ〜(笑)」とのことでした。

 

とにかく、丸っと1日、徹底的に楽しむことができた。

サーキットを走ることが、
これほど楽しいとは思ってもいなかった。

 

※今回も最後までご覧になってくださり、
 ありがとうございます。
 
 帰り道、マサカツ・カメラマンとコンビニに寄りました。
 「くじを引いたら当たったから、おまえにやるよ」
 といってくれたのが “タラタラしてんじゃねーよ”
 というお菓子でした。

 やっぱりマサカツ・カメラマンは怖い人だと思いました。
 (この記事見て、また怒られるんだろうなぁ。ひゃー。)

 

 そうそう! ロードスター・アンバサダーの山本修弘さんから
 ジムカーナでトップの成績をとったということで、
 ‘特別賞’ とプレゼントもいただきました。楽しかったなぁ。

 今後とも、[email protected] まで、
 皆さまの声をお聞かせください。
 もちろん、なんでもないメールだって
 お待ちしております。

 
 

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