【休日クラシック・ポルシェ・アーカイブ #36】1984年ポルシェ911カレラ3.2(前編)「新世代の911として1983年のフランクフルト・ショーで発表」

公開 : 2026.09.06 09:11

世界的な人気モデルとして支持され、サーキットでも数えきれぬ栄光の記録を刻んできたポルシェ。日曜日の午前9時11分に公開する、そんなポルシェの足跡を膨大なアーカイブと共に振り返る連載です。#36は『1984年ポルシェ911カレラ3.2』の前編です。  

初期901のフォルムを継承する最後の911

ポルシェ社はピーター・シュッツCEO就任以来、911を主力とした体制に変わる。

まず送り出された911 SCは、世界中で好評をもって受け入れられ、新生ポルシェを背負う存在となった。

ポルシェ911カレラ3.2
ポルシェ911カレラ3.2    ポルシェ

しかし、世界的な排気ガス規制のため対策車のパワーダウンは否めず、一方でライバルたちはパワーを次第に取り戻しつつあった。

こうしたなか、新世代の911として1983年9月のフランクフルト・ショーで発表されたのが、911カレラ3.2だった。

ポルシェらしい『進化』の手法に則り、排気量を3.2リッターに拡大。NAモデルとして過去最高となる231hpの最高出力を発揮した。

前モデルとなる911 SCと同様に定番のクーペとタルガ、そして新たな領域を切り開いたオープンモデルのカブリオレと、3つのボディタイプが用意された。

排気量を3.2リッターに拡大

エンジンの変更を具体的に説明すると、ボアは3リッターの911 SCと変わらぬ95mmを保つが、ターボ3.3のクランクシャフトと長いコンロッドを採用し、ストロークを70.4mmから74.4mmに伸長。総排気量は2994ccから3164ccに拡大された。

ポルシェによれば、911カレラ3.2のエンジンは、全体の80%が全面的に再設計されたという。

911カレラ3.2のエンジンは、全体の80%が全面的に再設計された。
911カレラ3.2のエンジンは、全体の80%が全面的に再設計された。    ポルシェ

あわせて、エンジン・マネージメントの近代化が進められた。

911 SCで使われていた機械式燃料制御の『Kジェトロニック』に代わり、新たな『Lジェトロニック』と、電子制御式の『ボッシュ・モトロニック(DME)』が採用された。これは、燃料噴射と点火を単一のユニットで制御できる初のシステムである。

当時導入されたばかりのオーバーレブ時の燃料カット機能と相まって、911カレラ3.2は排出ガス性能と燃費の両面で大幅な改善を果たした。

さらに、油圧式タイミングチェーン・テンショナーや改良型オイルクーラーも採用し、信頼性も高められていた。

これらの改良により、ドイツ仕様の最高出力は231hpを発揮し、0-100km/h加速タイムが6.1秒、最高速度は245km/hに達した。

1987年モデルからエンジンに改良

排気ガス規制が厳しいアメリカと日本仕様は、圧縮比が9.5:1に下げられると共に、排気系に触媒が組み込まれたため、最高出力は当初207hpにパワーダウンしていた。0-100km/h加速は6.5秒、最高速度は240km/hと、それぞれ+0.4秒、-5km/hほど動力性能が低下している。

1987年モデルから、エンジンに改良が施されたことにより217hpにパワーアップした。

スカートに組み込まれたフォグランプが911カレラ3.2の識別点。
スカートに組み込まれたフォグランプが911カレラ3.2の識別点。    ポルシェ

エンジンは大きく変更されたが、エクステリアの変更を僅かだった。

その中で識別点といえるのが、フロントバンパー下のスカートに組み込まれたフォグランプ。もう1点はエンジンフードに着く『Carrera』のバッジとなる。

カレラの名が意味するもの

こうして誕生した911カレラ3.2だが、「最高出力が1973年のカレラRS 2.7を越えたことから、それまではレーシング・モデルや、そのベースモデルに与えられていた『カレラ』の名称を冠した」と、ピーター・シュッツCEOが発表の場で述べている。

なお、ポルシェによる正式名称は『911カレラ』なのだが、他のカレラと区別するため『911カレラ3.2』と呼ばれることが多い。

911でカレラの名が与えられたモデルは、1973年のカレラRS 2.7を筆頭に、1974年カレラ、1975年カレラ、カレラ3.0と数多くあるためで、排気量を現す3.2を加えて区別されるのが一般的になっている。本稿でも『911カレラ3.2』と称する。

911カレラ3.2は、初期911が持つフォルムを継承した最後の911であり、26年間にわたるひとつの時代の終わりを象徴するモデルといえる。

ライバルを上回る高いパフォーマンスを備えた911カレラ3.2は、歴代911の中で商業的成功を収めたモデルとなった。

(当連載は、基本的に日曜日の午前9時11分に公開しています)

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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