【ビリオネアのお買い物は会社?】 カナダF1レーサーの父、英アストンの大株主になる日 

公開 : 2019.12.09 11:20

カナダの億万長者ローレンス・ストロールは、イギリスの高級車メーカー・アストン マーティンの主要株主となる準備を進めている模様。AUTOCAR英国編集部がRaceFans.netと連携し、その調査結果を公表。「今が買い時」と判断したようです。

買うなら今? 大富豪投資家の勝算

text:Jim Holder(ジム・ホルダー)
translation:Taeko Yamamoto(山本妙子)

ローレンス・ストロールは、推定資産が20億ポンド(約2851億円)を超えると言われる大富豪だ。F1ドライバー・ランスの父でもあり、(ランスの所属する)レーシングポイントF1チームのオーナーでもある。

また、クルマのコレクターとしても名高い。その中には、世界で最も貴重なクラシックフェラーリのコレクションと称されるものも含まれる。

現在、株価は低迷。
現在、株価は低迷。

投資や所有の対象はクルマだけではなく、ファッション・ジュエリー業界にも及ぶ。仏ピエール・カルダン、米ラルフ・ローレン、米トミー・ヒルフィガー、英アスプレイ、英ガラードなどに投資し、ブランドを構築している。

投資家として、そしてクルマのコレクタ―としての彼の関心が、今回はアストン マーティンの支配権獲得へ向けられたものと思われる。

現在、アストン マーティンの株価は低迷し、販売状況は予想を下回っている。

一方で、初のSUV「DBX」が正式発表されたばかりだ。

おそらく、彼は成功すると見積り「今が買い時」と判断したのだろう。

調査の裏で株価上昇 両者から回答なし

レーシングポイントF1チーム、そしてアストン マーティン※はともに、シルバーストン(モータースポーツの聖地といわれる)に拠点を置いている。
※本社所在地は、ウォリックシャー州ゲイドン。

ローレンス・ストロールは、RaceFans.netに対する回答を拒否。アストン マーティンは、AUTOCARからの連絡にノーコメント。

アストン初のSUV「DBX」。
アストン初のSUV「DBX」。

アストン マーティンは上場企業のため、株式市場に影響を及ぼす公式発表および公開買い付けにあたっては厳格な制約が課されている。

しかしながら、AUTOCARとRaceFans.netが調査を進めている裏で、株価が1日で20%近くも上昇した。

株価低迷、販売減速 厳しい評価 

アストン マーティンの株価は、現在5ポンド(約713円)前後で推移。売出価格17ポンド(約2424円)前後の高値から大きく下回っている。

現在、株式の過半数はクウェートを拠点とするAdeem Primewagonグループが保有。
約3分の1は、イタリアのPEグループ、インベストインダストリアル傘下のストラテジック・ヨーロピアン・インベストメントグループが保有している。

DBX、「コンコルド」エディション。
DBX、「コンコルド」エディション。

メルセデスの親会社であるダイムラーも同社株を4%保有。ダイムラーは、ストロールが所有するレーシングポイントF1チームにエンジンを供給している会社でもある。

アストン マーティンは2018年の上場以来、厳しい評価を受けている。時価総額は約50億ポンド(約7136億円)。今年初めには、世界的な需要の減速に直面し販売予測を大幅に下方修正した。2019年上半期で、8000万ポンド(114億円)近い損失を計上している。

(Dieter Renckenによる追加報告)

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