【休日クラシック・ポルシェ・アーカイブ #32】1978年ポルシェ935/78モービー・ディック「水冷式シリンダーヘッドを採用した初のレーシングマシン」

公開 : 2026.08.09 09:11

世界的な人気モデルとして支持され、サーキットでも数えきれぬ栄光の記録を刻んできたポルシェ。日曜日の午前9時11分に公開する、そんなポルシェの足跡を膨大なアーカイブと共に振り返る連載です。#32は『1978年ポルシェ935/78モービー・ディック』です。

1978年ポルシェ935/78モービー・ディック

グループ5で競われる国際メーカー選手権を席巻してきたポルシェ935は、1978年シーズンに向けて最終兵器といえる935/78を用意する。

ポルシェは、進化型935に、小説に登場する巨大な白鯨にちなんで『モービー・ディック』という愛称を与えた。935/78は、水冷式シリンダーヘッドを採用した初のレーシングマシンとなった。

1978年ポルシェ935/78モービー・ディック
1978年ポルシェ935/78モービー・ディック    ポルシェ

ポルシェはグループ5規定が施行されて3年目となる1978年の世界メイクス選手権のタイトルを、935を使うクレマーやジェロ、ヨーストなどの有力プライベーターに任せることにする。ワークスのマルティニ・レーシング・ポルシェ・システムは、グループ6のポルシェ936でル・マン24時間レースの総合優勝を狙っていた。ポルシェは936を援護するために935のパフォーマンスをより高め、ル・マンに向けて進化させた935/78を用意する。

935/78はル・マンの長大なストレートであるユノディエールで最高速を高めるためパワーが必要となることから、エンジンの排気量をターボ係数を加えて4.5リッター・クラスに収まる3211ccに拡大する。さらにシリンダーヘッドは出力向上のため空冷SOHC2バルブから、水冷DOHC4バルブに変更された。これにより最高出力は845hpに達した。

ボディはル・マンでの最高速度を高めることとスタビリティを確保するため、ロードラッグで空力を突き詰めたロングノーズ、ロングテールのスタイリングとされた。このル・マン・スペシャルといえる935/78は、シャシーナンバー935006の1台のみが製作された。

モービー・ディックの戦歴

デビュー戦となったのは世界選手権の第4戦となるシルバーストーン6時間レースで、ドライビングはヨッヘン・マスとジャッキー・イクスにステアリングに託された。予選では2位の935/77に1.91秒の大差をつけてポールポジションを獲得。レースでも圧倒的な速さを見せつけ、2位に7周のリードを築いて優勝した。

本来の任務であるル・マン24時間レースは、ロルフ・シュトメレンとマンフレッド・シュルティが担当。予選ではプロトタイプ・マシンのポルシェ936とルノーアルピーヌA443に続く3位に食い込み、ポテンシャルの高さを見せつけた。

ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』にちなんで『モービー・ディック』の愛称が付けられた。
ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』にちなんで『モービー・ディック』の愛称が付けられた。    ポルシェ

レースでも速さを見せつけてグループ5クラスのトップを維持し、プロトタイプ・マシンに肉薄する走りを見せていた。優れた空力性能のおかげで、ユノディエールの直線路では366km/hの最高速度を記録してみせた。しかしイグニッションのトラブルやオイル漏れが発生して後退し、最終的に総合8位、グループ5クラス3位でレースを終えた。

935/78はこのあと9月3日に開かれた世界メイクス選手権第8戦のヴァレルンガ6時間にジャッキー・イクスとマンフレッド・シュルティで挑んだ。予選では2位に1.4秒の差をつけてポールポジションを獲得。ただ、レースはインジェクションのトラブルでリタイアに終わっている。

2週間後の9月17日には、DRMシリーズのノリスリンク戦に935/78が姿を現す。ここではジャッキー・イクスがドライブしたが、レース序盤でリタイアという結果に終っている。すでにポルシェのワークス参戦は1978年を以て中止する決定がなされていた。935/78はノリスリンク戦をもって退役することになり、ミュージアムに収められることになった。

●空冷水平対向6気筒 3211cc ●845hp ●366km/h

(当連載は、基本的に日曜日の午前9時11分に公開しています)

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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