ベースは「7.5L V8でFF」のオールズモビル AQC ジェットウェイ707(1) ストレッチ・リムジンへ描いた明るい未来

公開 : 2026.08.09 17:45

6本のタイヤで全長8.5mのボディを支えるストレッチ・リムジン、AQC ジェットウェイ707。博物館の目玉コレクションになった、オールズモビルがベースの異質モデルを、UK編集部がご紹介します。

全長8.5mのボディを支える6本のタイヤ

4列並んだリアシートを載せた、全長8.5mのボディを支えるのは、合計6本のタイヤ。アメリカン・クオリティ・コーチ(AQC)社が手掛けた、ジェットウェイ707は、史上最も異質な送迎車両ではないだろうか。

英国ロンドンの高級ホテル前に停まる、ハイヤーやリムジンとはまったく違う。島国の庶民が観光バスに乗り込んで保養地へ向かっていた1960年代末、アメリカ人は長大なリムジンを手配し、空の旅への気分を盛り上げていた。

AQC ジェットウェイ707(1968〜1970年/オールズモビル・ベース)
AQC ジェットウェイ707(1968〜1970年/オールズモビル・ベース)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ベースとなったのは、1968年式オールズモビル・トロネード。排気量7.5LのビッグブロックV8エンジンをフロントに積み、前輪が駆動された。モデル名は、ジェット旅客機のボーイング707へちなんだものだ。

汎用性が高かった前輪駆動のパワートレイン

アメリカ人が作りそうなショーカーに見えるが、空港まで快適に移動するため、本気で生産されていた。しっかり目的が備わった、プロのドライバーが運転する送迎車両だった。1976年の映画「大統領の陰謀」にも、ちらっと登場している。

オールズモビルが開発した、エンジンやATなどのパワートレインが一体になった「ユニタイズド・パワー・パッケージ(UPP)」は、汎用性が高かった。トロネードと名付けられた巨大な前輪駆動クーペは、ベース車両として転用されることが多かった。

AQC ジェットウェイ707(1968〜1970年/オールズモビル・ベース)
AQC ジェットウェイ707(1968〜1970年/オールズモビル・ベース)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

例えば、1973年から5年間作られたスタイリッシュなキャンピングカー、GMCモーターホームも、UPPを利用している。オールズモビル自身も、ホイールベースを短縮した2シーターのグランツーリスモや、実用的なステーションワゴンを検討していた。

52台以上が生産されたジェットウェイ707

鬼才カーデザイナーのジョージ・バリス氏も、このUPPを活用した。依頼のあった個人顧客のため、トロネードのホイールベースを約910mm伸ばした4ドアリムジン、デ・エレガンスを1967年に製作している。

彼は他にも、脇役的な複数台を手掛けている。1967年のテレビドラマ「マニックス」向けには派手なロードスターが、1963年から続く映画シリーズ「ピンク・パンサー」には不思議なクーペが、それぞれトロネードを土台に作られた。

AQC ジェットウェイ707(1968〜1970年/オールズモビル・ベース)
AQC ジェットウェイ707(1968〜1970年/オールズモビル・ベース)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

とはいえ、ジェットウェイ707の奇抜さは群を抜いている。3023mmのホイールベースは、約4700mmへ延長され、リアアクスルが1本追加され、全長は3m以上も長い。リアサスペンションはリーフスプリングで、ブレーキも、ドラムのままだったが。

1968年から1970年にかけて、少なくとも52台が生産されたことは間違いない。正確な記録は残っておらず、100台以上ラインオフした可能性もある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

AQC ジェットウェイ707の前後関係

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