アウディR8 V10プラス・プロトタイプ

公開 : 2015.02.20 23:50  更新 : 2017.05.29 18:14

ハッケンバーグが言うには、相対的なスプリング・レートは、小さなバンプの吸収をより優れたものにするために若干ではあるが緩められ、反対にダンピングはより良いボディ・コントロールのためにこれも若干ではあるがステップ・アップされたという。滑らかでない路面においてアンダーステアが早くに発生するという第1世代のR8の弱点を改善するために、ホイール・トラベルが拡大され、フロントのブッシュも固められた。アウディの研究開発責任者が言うには、限界付近のコンプレッションを強化し、リバウンドに対するクオリティもアップしているという。「より高い精度で、そして、より速いコーナリング・スピードでクリアすることが可能だ。」と彼は語った。

油圧を一切用いず、電気機械式となったステアリングの変化も大きい。標準モデルでは、重さは可変だがレシオは固定式となる。しかし、オプションのセットアップでは、重さも可変でそのレシオも可変となる。

タイヤは標準で235/35ZR19をフロントに、295/35ZR19をリアに履く。しかし、多くのユーザーはオプションを選ぶこととなるだろう。アスカリ・サーキットで試したプロトタイプのように、フロントが245/30ZR20、リアが305/30ZR20というサイズだ。

第1世代のR8と異なり、第2世代のR8は、最初から最もパフォーマンスに優れるモデルをラインナップに並べた。「われわれは数を売るためにスーパーカーを作っているのではない。従って、最初から最もパフォーマンスに優れたモデルをラインナップしない理由はまったくない。」とハッケンバーグは語った。「将来的にはさらなるバージョンを計画することはあるが、そのための優れたベースとならなければならない。」とも言う。そのため、第2世代のR8の最初のラインナップからは、4.2ℓのV8は外された。ユーザーが最初に手に入れることができるのは、5.2ℓのV10モデルのみということになる。

この5.2ℓV10エンジンは、旧いR8にも使われているノーマル・アスピレーション・ユニットだが、大きく手が入れられている。エグゾースト・システムも新しくなったその90°ユニットは、15ps、1.0kg-mほどパワー・アップしている。スタンダード・モデルのR8に搭載されるV10ユニットは、540ps/8000rpm、55.0kg-m/6500rpmというスペックだ。

更にこのファースト・ロッドのトップ・モデルとしてR8 V10プラスがラインナップされる。これにはウラカンと同じパワーを持つV10ユニットが搭載される。610ps/8150rpm、57.1kg-m/6500rpmというパワー、トルクの数値が発表されている。第1世代のR8のトップ・モデルと較べると、60ps、2.1kg-mほどアップしたもの。軽くなったボディ重量もあって、パワー・ウエイト・レシオは419ps/トンという値だ。

ギアボックスは7速のデュアル・クラッチが引き継がれるが、より速くよりスムーズなシフトチェンジが可能となるようにソフトウェアがアップデートされている。また、先にも述べたように、アイドリング・ストップ・システムや、長時間のパーシャル・スロットル時にエンジンを空転させる機能などを採用している。この7速デュアル・クラッチのみが、新しいR8に用意される唯一のトランスミッションとなる。もちろん、オートマティック・モード、パドルシフトによるマニュアル・モードの両方を備える。

しかし、ドライブトレインの変化は、ギアボックスのソフトウェアのアップデートを遥かに超えているものだ。アウディは、旧いR8に採用されていたビスカス・カップリングを捨て、電子制御式の油圧マルチ・プレート・クラッチを新しいモデルに採り入れた。これによって、より直感的なコントロールが可能になっただけでなく、必要に応じて最大リアに100%のトルクを配分できるようになった。また、機械式のリア・ロッキング・ティファレンシャルを持つ。この新しい4WDシステムの一部は、EVモデルであるR8 e-tronのために開発されたという経緯がある。ちなみに、このe-tronは来月のジュネーブ・モーターショーで、ガソリン・エンジンのR8と同時に展示される予定だ。航続距離は400km以上を誇るという。

R8 V10プラス・プロトタイプには、不可欠な情報を得ることのできる高解像度のデジタル・ディスプレイが装備される。そして、ドライビング・モードを変更するためのダイヤルとノブを備えたマルチ・ファンクション機能を持つフラット・ボトムのステアリング・ホイールがドライバーの目の前にレイアウトされる。

新たに設計されたダッシュボードは、非常に高いクオリティを持っている。インターフェイスも機能的で、ドライバーを走りに集中させる優れたものと言える。

2シーターのスーパーカーであるR8だが、その実用性はライバルに対して負けているという面はない。シートの後ろのコンパートメントのサイズは120ℓと充分で、フロント・ノーズの下にも104ℓのラゲッジ・スペースがある。

ステアリングを握りたいという望みは今回は叶えられなかったが、アウディ・スポーツカーのレギュラー・ドライバーでもあり、AUTOCARサイドウェイ・チャレンジのチャンピオンでもあるフランク・スティップラーがドライブするR8のパッセンジャー・シートに収まることはできた。そこには多くの発見があった。

ステアリング・ホイールの右下に取り付けられたスタート・ボタンを押し、スポーツ・モードを選ぶためのボタンをセレクトする。エンジンは、ピット・ガレージの中で激しいサウンドと共にブリッピングを行う。そしてR8 V10プラスを静かにコースへと導き出していく。

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