抜群のV10エンジンとシャシーの相性 アウディR8 V10パフォーマンス RWD 愛おしい1台との別れ(2)

公開 : 2023.10.30 19:06

16年間に渡り無二の存在といえたR8 2代目で熟成を重ねたV10で後輪駆動のRWD 生産終了を控え英国編集部が魅力を再確認

少し方向性を見誤っていた当初の2代目

2006年に発売されたミドシップ・スーパーカーのアウディR8には、これまで複数の仕様が存在した。最高出力も異なり、特別仕様も何度か提供されている。コンテンツの都合上、そのすべてへ触れることは難しいけれど。

5.2L V型10気筒エンジンが搭載さたのは、初代の後半から。アウディでは叶え難かった繊細な操縦性を多少犠牲にしつつ、溢れんばかりのパワーを手に入れていた。

アウディR8 V10パフォーマンス RWDエディション(英国仕様)
アウディR8 V10パフォーマンス RWDエディション(英国仕様)

2015年に2代目へモデルチェンジ。筆者が気に入っていた4.2L V8エンジンは任務を終え、マニュアル・トランスミッションも選べなくなってしまった。

当初の2代目は、少し方向性を見誤っていたのかもしれない。グランドツアラーとして乗るには、求められる我慢が小さくなかった。スーパーカーとして楽しむには、興奮が若干足りなかった。

マクラーレン570Sが発表された時、AUTOCARでは競合モデルによる比較試乗を実施した。ポルシェ911 ターボとアストン マーティンヴァンテージに並んで、R8も同じ土俵へ加わったが、結果は振るわなかったと記憶している。

その印象のままだったら、これほど別れを惜しむことはなかったと思う。しかし2017年に、四輪駆動の「クワトロ」を自慢とするアウディは思いきった決断をした。フロントのドライブシャフトを省いたのだ。

アウディの量産車として初めて、後輪駆動モデルが誕生した。シャシーバランスに秀で、挙動の予想がしやすく、コミュニケーション力が高い、出色のR8へ仕上がっていた。筆者に限らず、自動車ジャーナリストはこぞって高く評価した。

V10エンジンとシャシーとの相性は抜群

当初、そのR8 RWSは999台の限定生産となっていた。だが人気へ押されるように、2018年にR8 RWDが正式なカタログモデルへ追加されている。いま筆者が試乗しているのも、その愛おしい最終仕様、R8 V10パフォーマンス RWDエディションだ。

カーナビは少々使いにくく、デジタルラジオは感度が良くない。インテリアデザインも、時間の経過を感じさせる。表面的な部分では、多少の古さを隠せない。それでも、後輪駆動のR8のドライビング体験は極めて素晴らしいままだ。

アウディR8 V10パフォーマンス RWDエディション(英国仕様)
アウディR8 V10パフォーマンス RWDエディション(英国仕様)

初代ではV8エンジンに劣ると感じていたV10エンジンも、熟成を重ねた2代目では、滑らかで個性的で、完璧なパワーユニットに思える。ダウンサイジングターボの時代に大排気量・自然吸気が維持され、サウンドやレスポンスは孤高といえる。

最高出力は570ps/8000rpmで、最大トルクは56.0kg-m/6400rpm。2代目のR8の中では高い部類に入らないとしても、まったく不足はない。

V10エンジンと、後輪駆動のシャシーとの相性は抜群。中回転域でトルクが豊かに湧出し、しっかり足腰の限界領域まで負荷を加えることができる。それでいて、過剰気味なパワーに圧倒されることもない。

最近の高性能モデルは、一層の速さが追求されているものの、一層重くなってもいる。強力で鋭い加速を実現しつつ、親しみやすさが増しているわけではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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