クルマの板金 直面する後継者の育成問題 英名門に密着

公開 : 2018.09.02 08:40

神経を使うホイーリング

英国式ローラーはとても単純な装置だが、マスターするのは非常に難しい。写真でおわかりのように、ペアのローラーが備わった巨大な「圧延機」である。G&Aには3台あり、それぞれペアローラーの形状が異なる。1台のローラーはほぼ平ら、もう1台のローラーははっきりとカーブが付いている。グレースとわたしが今使っているのはその2台の中間だ。

このホイーリングはとても神経を使う仕事である。作業を始めたローフは金属シートを丁寧に押したり引いたりする。手で慎重に圧力を操作しながらローラーの間を前後に動かして形を作っていく。とてもデリケートなバランスが必要とされる。力を加え過ぎてしわが入ってしまえばゴミ箱行きだ。わたしは圧力のかけ方が足りなかったので、何回ローラーの間を通してもまったくシートを成形できなかった。

「わたしだとフェンダー1枚仕上げるのに数日かかりますが、ローレンスだと午前中でおしまいです」とローフはいう。それに対してケットは「わたしはずっとこれを仕事にしてきたんですよ。数えきれないほどのコブラを製作してきたのですから」と応じた。

数時間すると背中が突っ張ってきたが、ローフの忍耐と技術のおかげで、金属シートはうまい具合に曲面になってきたようだ。コブラのフェンダーはいくつかの部分に分かれており(いま作っているのはその最先端の部分でヘッドライトの穴が開いている)、最終的にガス溶接されてひとつになる。ガス溶接にも別の技術が必要だ。

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