【羊の皮の狼サルーン】ヴォグゾール(オペル)・ロータス・カールトン 30年目の英国試乗 前編

公開 : 2021.03.04 08:25  更新 : 2022.08.08 07:33

古いオペルのサルーンにしか見えない、ロータス・カールトン。プレイステーションのゲームでご存知の読者もいるでしょう。英国編集部が誕生30周年を祝い、試乗しました。

GM傘下にあったオペルロータス

text:Matt Prior(マット・プライヤー)
photo: Max Edleston(マックス・エドレストン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
オペルの英国ブランド、ヴォグゾールの本社があったグリフィン・ハウスは静まり返っている。この場所は、1964年から2019年まではレセプションエリアだった。

フロントのデスクのそばに、勢いよく流れる滝があったのを覚えている。そこに立つ警備員が聴覚障害にならないか、いつも心配していた。

ヴォグゾール(オペル)・ロータス・カールトン(1990年/英国仕様)
ヴォグゾール(オペル)・ロータス・カールトン(1990年/英国仕様)

ヴォグゾールの本社は移転し、この土地は住宅地へと生まれ変わる予定。時折、商用車が横を通り過ぎる。そして筆者の目の前には、ダークグリーンに塗られたヴォグゾール(オペル)・ロータス・カールトンが停まっている。

ロータス・カールトンは、すべてがダークグリーンに塗られていた。「オプションはありません。そこにあるのを選ぶか、選ばないかです」。と当時を振り返るのは、マルコム・ティアール。スペシャル・プロジェクトの若きマネージャーを務めていた。

彼はこれまでにモナーロやVXR8、VX220(スピードスター)などの開発に関わってきた。誕生から30年を迎える、ロータス・カールトンも。

現在、オペルはグループPSAの一員となり、ロータスはジーリー・ホールディングスの傘下にある。しかし1990年代は、オペルもロータスもジェネラル・モータース、GMの傘下にあった。

当時のオペルとヴォグゾールには少し時代遅れの雰囲気があり、ロータスの経営は安定していなかった。そんな状態を打開すべく、オペルのビッグサルーンをベースにした高性能仕様、ロータス・カールトンが1990年に誕生した。

最高速度283km/hのロータス・カールトン

新車時の英国価格は4万8000ポンド。実際、少しは効果があったと思う。

「最高速度は283km/h。社会的責任のないクルマだと当時のマスコミは報じました」。とティアールが話す。AUTOCARですら「289km/hとうたわれる最高速度が必要だと感じる人も、実際に出すドライバーもいないだろう」。とまとめている。

オペルでスペシャル・プロジェクトに関わっていたマルコム・ティアールとヴォグゾール(オペル)・ロータス・カールトン
オペルでスペシャル・プロジェクトに関わっていたマルコム・ティアールとヴォグゾール(オペル)・ロータス・カールトン

ヴォグゾールの経営陣へ、最高速度は249km/hでリミッターをかけた方がいいと提案した人はいなかったのだろうか。むしろ彼らは、クルマの能力を発揮させたかったようだ。

ティアールが続ける。「その頃の地上スピード記録の保持者だったリチャード・ノーブルと、エルビントン飛行場で挑戦したんです。ホールデン・モナーロとロータス・カールトンで最高速度に挑みました」

「カールトンのブレーキが踏まれた時、スピードメーターは6時の位置を差していました。計算上、299km/hに相当します」

1990年のランボルギーニフェラーリといったスーパーカーも、負けじと速かった。しかし、フロントノーズにヴォグゾールのエンブレムを付けたようなクルマでは、ほかに存在しない速さだった。実験的な走行ではあったが、驚くべき速度だったといえる。

事実、ロータス・カールトンは0-97km/h加速5.1秒、0-160km/h加速11.1秒という俊足を誇った。48km/hから112km/hまでの中間加速は、3.8秒しかからなかった。

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