ベントレー・ベンテイガ Sへ試乗 4.0L V8ツインターボ 欧州ではW12が廃盤へ

公開 : 2022.01.28 08:25

CO2排出量規制へ応じるように欧州で廃盤となったW12に変わり、シャープなV8版が登場。英国編集部が評価しました。

馬力はそのまま シャシーをチューニング

2022年も一部の市場ではW12気筒エンジンを搭載したベントレーベンテイガ・スピードが売られているが、2021年に施されたフェイスリフトに伴い、欧州では提供がストップしてしまった。CO2排出量の規制強化と、それに伴う需要低下が原因のようだ。

そこでベントレーは、ベンテイガへ「S」を追加。ベンテイガ V8へ手を加えることで、W12エンジン版へ迫る能力を与えている。ただし、パワーアップはしていない。

ベントレー・ベンテイガ S(欧州仕様)
ベントレー・ベンテイガ S(欧州仕様)

ベントレーの内部関係者の話では、欧州の認可申請にかかる複雑さのため、最高出力の変更は見送られたそうだ。それでも、4.0L V8ツインターボ・エンジンが発揮する549psと78.3kg-mという数字は、充分に印象的なものではある。

カタログ値によると、0-100km/h加速は4.5秒で、最高速度は289km/hに達する。ベンテイガ・スピードと比べるなら、0.6秒遅く、16km/h低い。これを実際のターゲット層はどう受け取るだろうか。

標準のベンテイガ V8からの変更で最も注目するべきポイントが、シャシーのチューニング。サスペンションは、ダンパーの減衰力を15%引き締めたという。さらにスポーツ・モード時は、よりダイナミックな走りにも応じたESCの設定が与えられている。

ベントレーがダイナミック・ライドと呼ぶ、アクティブ・システムも標準で搭載する。電圧48Vで動作するモーターの力で、アンチロールバーへトルクを加え、コーナリング時のボディロールを抑える機能だ。

新エグゾーストで音響的な豊かさを増長

オーナーとしては、見た目の差別化も重要だろう。ベンテイガ Sは、ベンテイガ V8ではオプションとなる、ブラックラインと呼ばれる艶を落としたボディトリムを標準でまとう。ドアには、控えめなSのエンブレムが張られる。

リアへ回ると、大きなウイングがテールゲートに追加され、左右に別れた楕円形の太いマフラーカッターが凄みを利かせている。アルミホイールは標準で22インチを履く。シートの背もたれにも、Sのステッチが施される。

ベントレー・ベンテイガ S(欧州仕様)
ベントレー・ベンテイガ S(欧州仕様)

ベンテイガの堂々としたスタイリングや全体のフォルムは、例えるなら豪邸のように風格がある。それでいて通常のV8でも、右足へ力を込めれば圧倒的な動力性能に浸ることができる。そしてこのSでは、その能力がさらに高められている。

確かにパワーアップは果たしていないものの、新しいエグゾーストシステムの獲得で、V8エンジンは音響的な豊かさを増長。アイドリング時から聴き応えがあり、通常の走行時でもゴロゴロとうなりを響かせる。

さらに回転数が高まるほど、感情を顕にするような轟音が放たれる。ただし、筆者のようなクルマ好きは好意的に聞くかもしれないが、フルスロットル時のノイズに冷たい視線を送る人もいるだろう。

休日の早朝に、ベンテイガ Sをガレージから連れ出そうとすれば、隣人にも気づかれてしまいそうだ。広い敷地の豪邸でない限り。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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