ベントレー・ベンテイガ Sへ試乗 4.0L V8ツインターボ 欧州ではW12が廃盤へ

公開 : 2022.01.28 08:25

標準のしなやかさは維持しつつタイトに

シャシーのチューニングは良く練られており、標準のベンテイガ V8が備えるしなやかさを損なってはいない様子。北米、カリフォルニア郊外での、比較的短い時間の試乗ではあったが。

スポーツ・モード時は、細かな周期の凹凸などを通過すると、車内にエッジのある振動を伝えてしまう。かといって、不快に感じるほどではない。

ベントレー・ベンテイガ S(欧州仕様)
ベントレー・ベンテイガ S(欧州仕様)

コンフォート・モードを選択すれば、巨大な22インチ・ホイールを履いていても、ベンテイガ V8と同等に柔らかな乗り心地を味わわせてくれる。エアスプリングが知的に路面からの入力を吸収し、ボディを平穏に保ってくれる。

とはいえ細かいことは気にせず、ベンテイガに乗るなら、デフォルトのBモードを選ぶのが良い。ベントレーが施したチューニングは、殆どの場面で正解だと感じられるはずだ。

ダイナミック・ライドは、ドライバーに意識させることなく巧みに仕事をこなす。激しいコーナリング時は、完全にボディロールを打ち消すわけではない。ドライバーにシャシーへの負荷を感じさせるため、意図的に僅かにボデイは外へ傾く。

それでも、ボディの大きさや重さを考えれば印象的に動きは抑制され、扱いやすい。タイトコーナーでは最終的にアンダーステアへ転じるものの、そこまでの領域の高さにも唸らされる。

欧州版のトップ・オブ・ベンテイガ

8速ATは、スポーツ・モード時の減速が積極的すぎる印象。V8ツインターボのトルクは極太ながら、優しめのアクセル操作でも加速時はキックダウンし、高めの回転数を使おうとする。

ステアリングホイールにはシフトパドルが付いているが、手で弾いた反応は若干鈍く感じられた。短時間に連続してパドル操作を試みると、弾いた回数と変速の段数が合わない場面もあるようだ。

ベントレー・ベンテイガ S(欧州仕様)
ベントレー・ベンテイガ S(欧州仕様)

ベンテイガ S用のアルミホイールは複数用意されるが、好き嫌いが分かれるかもしれない。試乗車が履いていた5スポークでブラック塗装されたデザインは、少々純正感が足りないようにも見える。

大型ラグジュアリーSUVを選ぶようなユーザー層の場合、条件の最上位に動力性能を据える人は少ないとは思う。そう考えると、ベンテイガ Sへ施された操縦性や音響面でのアップグレードは、とても意味を持つことになる。

ベンテイガ Sの英国価格は、18万2300ポンド(約2825万円)。ベンテイガ V8から、2万4500ポンド(約379万円)ほどの価格上昇となる。その追加費用を超えるほどの内容を得たとは、いえないかもしれない。

ただし、2022年の欧州で購入できるトップ・オブ・ベンテイガをお探しなら、このSが答え。仕上がりもベストといえるだろう。

ベントレー・ベンテイガ S(欧州仕様)のスペック

英国価格:18万2300ポンド(約2825万円)
全長:5150mm
全幅:1995mm
全高:1755mm
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:4.4秒
燃費:7.5km/L
CO2排出量:302g/km
車両重量:2416kg
パワートレイン:V型8気筒3996ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:549ps/6000rpm
最大トルク:78.3kg-m/1960rpm
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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