速さは往年のF1級 レボリューションSC500へ試乗 3.7L V6スーチャーで634ps/t

公開 : 2022.06.16 08:25

ハーフウエットでフルパワーを放てる安定性

今回筆者が試乗させてもらうマシンは、英国の自転車競技選手、クリス・ホイ氏によってレースへ参戦した過去がある。彼は、LMP2ル・マン・マシンのレーシングドライバーでもある。

ホイが筆者に優しく話しかけてくれた。「きっと気に入ると思いますよ。とても扱いやすいクルマです」。そして続ける。

レボリューションSC500
レボリューションSC500

「コースイン時は、スリックタイヤが冷えた状態なので、プッシュしすぎない方が良いでしょう。ピットレーンの出口で、1回転するのを見たことがあります」

1回目のセッションは雨上がり。コースは部分的にウェットで、部分的にドライだった。状況が読みにくく、最も難しいコンディションだといえる。完全にウェットの方が、むしろ簡単だったりする。

コースインすると、SC500はとても安定していた。数週を走り終えた辺りで、トラクションコントロールをオフにする。フルパワーを放ちながら、ドニントンパークのタイトコーナーを楽しめるようになっていく。リアがうずく様子がわかる。

6速シーケンシャルMTにはシフトパドルが付いていて、シフトアップは高級車のように滑らか。シフトダウンは、V6エンジンの唸り声を交えながら、ドラマチックにスパスパと決まる。クラッチペダルは付いているが、基本的に踏まなくていい。

自分でコントロールできる範囲で、コーナリングスピードを徐々に上げる。自信を持ってSC500を走らせている限り、幸福感が湧いてくる。だが、例のクラナー・カーブをベタ踏みでは通過できない。

1970年代後半のF1マシンと同等の速さ

2回目のセッションは、完全なドライ。能力の高いモデルの場合は、手強いコンディションだ。マシンの限界付近まで迫っていたと感じていたが、実際にはまだ上がある。その事実がもどかしい。

乾燥した路面では、コーナリング時に掛かる力は想像を超えている。普段どおり、インを突いたラインをたどることが難しい。まだ限界の手前なことはわかるが、そこへ迫るにはどう操れば良いのか、正確にはわからない。

レボリューションSC500
レボリューションSC500

若くない筆者だが、可能な限り踏ん張り、イン側の縁石へ乗り上げる。テールが軽く流れ、マシンが筆者のガッツに応えてくれた。

自動車ジャーナリストの筆者にとっては、これが限界。SC500は比較的手頃なレーシングカーだが、たやすくプロドライバー級にラップタイムを刻めるわけではない。突出した才能も求められる。走行データを分析し、それを走りに展開できる技術も必要だ。

このマシンを手懐けることができれば、ラディカルやLMP3で戦うレース、スポーツ・プロトタイプ・カップも目指せるだろう。ごく一部の、特別なドライバーなら。

筆者がSC500を試乗した同じ日、ドニントンパークにはレーシングドライバーのニック・パドモア氏も来ていた。古いF1マシンのテスト走行をしていた彼は、業界では名の通った人物だ。

SC500のラップタイムをパドモアに見せると、パワフルで軽量で、ダウンフォースが弱かった1970年代後半のF1マシンと同等の速さだと話していた。それを聞いて、クラナー・カーブで右足を緩めた自分を許すことができたのだった。

レボリューションSC500(英国仕様)のスペック

英国価格:16万ポンド(約2608万円/予定)
全長:4353mm
全幅:2000mm
全高:1125mm
最高速度:289km/h
0-97km/h加速:2.4秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:800kg
パワートレイン:V型6気筒3726ccスーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:507ps
最大トルク:−
ギアボックス:6速シーケンシャル・マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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