モデルチェンジで能力伸長 BMW X1 xドライブ23iへ試乗 高い完成度のファミリーSUV

公開 : 2022.09.30 08:25

SUVとしてはシャープな旋回性

優れた印象を伸ばしているのが、7速デュアルクラッチAT。短時間にキビキビと流暢に変速をこなし、シフトパドルの操作にも鋭く応えてくれる。

唯一残念に感じられたのが、高回転域で粗さが目立つエンジン音。積極的に回す動機づけにはならないだろう。

BMW X1 xドライブ23i Mスポーツ(欧州仕様)
BMW X1 xドライブ23i Mスポーツ(欧州仕様)

操縦性もコンパクトSUVとしては優秀といえるが、BMWとして刺激的というわけではないようだ。ステアリングホイールには路面やフロントタイヤの感触が充分に伝わらず、気持ちが鼓舞されることはない。

操舵時の重み付けは良く、挙動も予想しやすく、コーナリング時の自信は得られる。姿勢制御も悪くなく、このカテゴリーではシャープな旋回性を実現している。xドライブがリアタイヤへパワーを多めに割り振る感覚もあり、運転する楽しさはある。

試乗車のようにMスポーツ仕様の場合は、アダプティブダンパーが標準装備。ホイールは19インチで、乗り心地は悪くない。一方で、攻め込んだコーナーでの安定性はもう少し欲しい。舗装の剥がれた穴などの入力の処理には、改善の余地はある。

このクラスのSUVとして、X1は活発に走る。エンジンもステアリングもレスポンシブだ。ただし、選択肢をSUVに拘らないのなら、3シリーズ・ツーリングの方が流れるような走りを謳歌できることは間違いない。

車内空間と実用性がストロングポイント

新しいX1で最大のストロングポイントになるのが、インテリアと実用性。リアシートは60:40に別れて最大130mmもスライド可能。背もたれは40:20:40の3分割で倒せ、リクライニングもできる。身長180cmの大人が座っても、充分な空間はある。

荷室は使い勝手の良い形状で500Lあり、フロアは適度に低い。ベビーカーの積み下ろしも簡単そうだ。フロントシート裏は硬めの樹脂で覆われ、子供が靴で汚しても拭き取りやすい。ファミリーSUVとして的を得ている。

BMW X1 xドライブ23i Mスポーツ(欧州仕様)
BMW X1 xドライブ23i Mスポーツ(欧州仕様)

フロントシート側は、先代からプレミアム感が明確に高められた。ダッシュボード上には、最新OSのバージョン8で稼働する14.9インチのモニターが2面並ぶ。

iドライブ用のロータリー・コントローラーは省かれたもののシステムは扱いやすく、グラフィックは競合をリードする。アップル・カープレイとアンドロイド・オートに無線で対応し、実装されるナビも有用だが、利用場面は少ないかもしれない。

内装素材には高級感がありつつ、過度な華やかさは抑えられている。全体のデザインもスマートかつモダンで居心地が良く、お手本のようなインテリアだ。

モデルチェンジを果たしたBMW X1。アウディQ3メルセデス・ベンツGLAレクサスUXなどとの競争を有利に運べる仕上がりだといっていい。

インテリアの仕立てはBMWにふさわしく、実用性も秀でている。適度に楽しめるドライビング体験もX1の魅力ながら、それ以上にプレミアム・ファミリーSUVとしての完成度の高さを評価したいところだ。

BMW X1 xドライブ23i Mスポーツ(欧州仕様)のスペック

英国価格:4万3250ポンド(約713万円)
全長:4500mm
全幅:1845mm
全高:1642mm
最高速度:233km/h
0-100km/h加速:7.1秒
燃費:14.7km/L
CO2排出量:152g/km
車両重量:1655kg
パワートレイン:直列4気筒1999ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:218ps/5000-6500rpm(システム総合)
最大トルク:32.5kg-m/1500-4000rpm(システム総合)
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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