【現役デザイナーの眼:ホンダ・スーパーワン】初期からシティターボIIを意識 意図が伝わる優れたデザイン

公開 : 2026.05.07 11:45

現役プロダクトデザイナーの渕野健太郎によるデザイン分析。今回取り上げるのは、スポーツコンパクトEV『ホンダ・スーパーワン』です。初期から往年の名車、シティターボIIを意識したデザインを解説します。

久々、ホンダらしいワクワクするクルマ

最近、日本でもEVが少しずつ身近な存在になってきたと感じます。海外メーカーからは多くのモデルが輸入され、日本メーカーもラインナップを着実に増やしています。そんな中、今回ホンダから新たにスポーツコンパクトEV『Super-ONE』(以下スーパーワン)が発表されました。

スーパーワンを見てまず感じたのは、『久しぶりにホンダらしい、ワクワクする企画とデザインが出てきたな』ということです。

1983年に登場したホンダ・シティターボII(上)と、それをオマージュしたスーパーワン(右)。
1983年に登場したホンダ・シティターボII(上)と、それをオマージュしたスーパーワン(右)。    本田技研工業

軽自動車『N-ONE』シリーズの流れを汲んだボディはとてもコンパクト。その上で、しっかりと張り出したオーバーフェンダーを組み合わせることで、可愛らしさの中に走りを感じさせる緊張感が生まれています。

1983年に登場した『シティターボII』へのオマージュのようでもありながら、しっかりと現代的な新しさも感じられ、とてもバランスの良いデザインだと思いました。

近年のホンダは、ミニマルでクリーンなデザインを志向し、他メーカーとは少し距離を置いた独自のポジションにいると感じます。それは大変良いことなのですが、その一方で少しワクワクする要素が減っていた印象もありました。

スーパーワンはそんなふたつの要素をうまく両立した、魅力的な1台と言えそうです。

軽自動車の中で随一の完成度

まずはベース車となる、『N-ONE』から見ていきたいと思います。

2020年にフルモデルチェンジした現行2代目N-ONEは、旧型と非常によく似たデザインだったことが話題になりました。これは、初代のデザインがすでに高い完成度を持っていたからでしょう。

スーパーワン、大元のベース車となった『ホンダN-ONE』。
スーパーワン、大元のベース車となった『ホンダN-ONE』。    本田技研工業

寝かせたCピラーやリアゲートまわりが特徴的なサイドシルエットは、往年の欧州製コンパクトカーを思わせます。全幅1475mmに対して全高1545mmという、スタンスを表現するには不利なパッケージにもかかわらず、N-ONEはどこから見ても踏ん張り感のある非常に安定したプロポーションを持っています。

フロントまわりは可愛らしさがありながらも、質感や作り込みの良さもしっかり表現。特にヘッドランプやグリルの仕立ては上級車のようで、大型車からのダウンサイジング需要にも応えられる『いいもの感』にあふれた、珍しい軽自動車だと思います。

よりボクシーなシルエットに

そのN-ONEをベースにEVとして再構築したのが、『N-ONE e:』です。

サイドシルエットを見ると、特にフロントまわりが変化していることが分かります。ベースのN-ONEよりもグリルまわりのスラントを抑え、よりボクシーなシルエットになりました。

N-ONEをベースにEVとして再構築した、『ホンダN-ONE e:』。
N-ONEをベースにEVとして再構築した、『ホンダN-ONE e:』。    本田技研工業

これは単なるデザイン変更ではなく、フロントグリル部分に給電口のスペースを設けたことも大きな理由だと考えられます。この変更によって、さらにクリーンでシンプルな印象になりました。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

現役デザイナーの眼の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事