A110並みの馬力重量 カム・マヌファクトゥア912cへ試乗 750kgに170psのフラット4

公開 : 2022.11.01 08:25

2.0Lへボアアップし、最高出力170psを発揮

水平対向4気筒エンジンは、1.6Lから2.0Lへボアアップ。エンジンブロック自体とクランクはオリジナルで、最高出力は170ps/6800rpmを発揮する。レッドラインは7200rpmに設定され、最大トルクは21.9kg-m/5450rpmと太い。

トランスミッションは、1速が横に飛び出たドッグレッグ・パターンの5速マニュアル。リミテッドスリップ・デフも組まれる。

カム・マヌファクトゥア912c(欧州仕様)
カム・マヌファクトゥア912c(欧州仕様)

フロントのマクファーソン式サスペンションには、車高調整できるコイルオーバーを装備。トレーリングアーム式のリア側には、車高調ではないダンパーとスプリングが組まれていた。

カズメールによると、リアも車高調にできるそうだ。その場合はエンジンの位置が若干前寄りになり、前後の重量配分を50:50に近づけることも可能だという。現状では、リア側に約6割が載っている。

ブレーキは964型ポルシェ911用のものが組まれる。アシストは付かない。

2.0Lで170psと聞くと、物足りなく感じる読者もいらっしゃるだろう。それでも車重は750kgだから、パワーウエイトレシオはアルピーヌA110と同等。フランス製ミドシップは、300psでも1119kgある。

ここまで912cを確認して、繊細で軽快なドライビングフィールを想像するかもしれない。ところが実際は少々異なる。

ステアリングのロックトゥロックは1.7回転しかない。筆者は、ゴーカートのように振り回して欲しいと伝えられた。サスペンション・スプリングが短く、バンプストッパーに当たっても気にしなくていいとも。

ケータハム級の半端ないクルマへの没入感

912cは、全身で運転するタイプのクルマだった。シートポジションは良好で、ペダルはティルトン社のフロアヒンジで踏みやすい。どれも感触は良いものの、かなり重たい。

ステアリングホイールは驚くほどダイレクトで、ヘビーでクイック。もう少し穏やかな特性でも良さそうだ。シフトレバーは古いフォルクスワーゲンビートルのようにゲートが曖昧。こちらも、改良の真っ最中らしい。

カム・マヌファクトゥア912c(欧州仕様)
カム・マヌファクトゥア912c(欧州仕様)

エンジンは痛快なフラット4の唸りを放ち、アクセルペダルの操作に鋭く反応。これ以上のパワーアップも可能らしいが、公道用スポーツカーとしては丁度良いように思う。

低い回転域から力強く、サウンドは912cの雰囲気にピッタリ。往年のレーシングカーを理想とするクルマらしく、うるさい。

乗り心地は、全体的に落ち着いていて好印象。荒れた路面では、時折処理しきれない場面もあった。

ステアリングホイールを握って左右へ切り込むとリミテッドスリップ・デフが反応し、フロントノーズの向きを変えるアシストをしてくれる。極めて機敏で、運転しがいがある。

見た目の雰囲気やスペックから、郊外の大型シアターへ気軽にドライブするようなスポーツカーをイメージしていた。だが実際は、土曜日の早朝にワインディングを駆け登り、眼下の景色を眺めつつコーヒーを飲むようなドライブが向いている。

クルマへの没入感は半端ない。ケータハムに近い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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