V12エンジンでFRの2+2 フェラーリ365 GT4 2+2 400 GTi 412 対極の3台 前編

公開 : 2023.03.12 07:05

6基のウェーバー・キャブで324ps

アルミニウムとシリコンの合金、シルミン材を用いたクランクケースとエンジンブロックに、ビレット加工された窒化処理スチール製のクランクを採用。ウェットサンプで、1940年代に起源を持つエンジンの最新版といえる設計だった。

マラネロの職人が丁寧に組み上げると、テスト運転を経て、チューブラーフレームの中心寄りに4点のマウントを介して収まった。殆ど隠れて見えない位置に、マレリ社の2基のディストリビューターがある。

フェラーリ365 GT4 2+2(1972〜1976年/英国仕様)
フェラーリ365 GT4 2+2(1972〜1976年/英国仕様)

ボンネット・ラインを低く抑えるため、6基のサイドドラフト・ウェーバー・キャブレターはカムカバーの外側。オイルフィルターはバンク内へ2基並んだ。

トランスミッションは5速マニュアル。トルクチューブで、リアのリミテッドスリップ・デフと一体化された。実用的なリアシートを配置する上で、トランスアクスル・レイアウトは理に適っていなかった。

快適性を求め、パワーステアリングとエアコンを標準装備し、内装はコノリー・レザーで仕立てられた。タイヤはミシュランXWXで、幅は215と当時の最新サイズ。クロモドラのセンターロック式ホイールが足元を引き締めた。

最高出力は324psで、最高速度は241km/h。燃費は3.9km/Lがうたわれ、ツイン燃料タンクを満タンにすれば640kmの航続距離が得られた。

365 GT4 2+2にATは採用されなかったが、同時期のマセラティランボルギーニを考えると、フェラーリも念頭にはあったはず。実際、北米のディーラーは400型と呼ばれるGM社製のATへ換装して販売もしていた。

インジェクションの400 GTiへ進化

マラネロも、AT仕様の365 GT4 2+2を受け取り評価している。そして、1976年のパリ・モーターショーでマイナーチェンジ版となる400 GTと、400 オートマチックを発表。V型12気筒はロングストローク化され、4823ccへ拡大された。

キャブレターは変わらず6基のウェーバーで、8.8:1の圧縮比から344psを発揮。カムと点火タイミングの改良でトルク特性は大きく変化し、44.0kg-m/4600rpmから47.8kg-m/3600rpmへ増大している。

フェラーリ400 GTi(1976〜1985年/英国仕様)
フェラーリ400 GTi(1976〜1985年/英国仕様)

スタイリングでは、フロントのチンスポイラーと、テールライトが6灯から4灯へ変更された点がわかりやすい。ホイールは5本のボルトで固定され、ドアミラーは電動式に。インテリアもわずかにアップデートされた。

リアシートへの乗降性を高めるため、自動で前方にスライドするフロントシートも獲得。荷室が小さくなることを受け入れれば、リア用の2基目のエアコン・システムを組むことも可能だった。

1979年には、キャブレター仕様の400 GTはインジェクションの400 GTiへ進化し、環境負荷と冷間時の始動性を改善。ボッシュ社のKジェトロニック・システムと非接触式ディストリビューターを組み合わせ、2基並んだ直列6気筒のように制御された。

ただし最高出力は314psへ、最大トルクは41.9kg-mへダウン。英国価格は3万1809ポンドへ上昇したが、512 BB、ベルリネッタ・ボクサーより2000ポンド安かった。

また400 GTiには、新しいオプションとして電動サンルーフが登場。タイヤはミシュランTRXが選ばれた。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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