V12エンジンでFRの2+2 フェラーリ365 GT4 2+2 400 GTi 412 対極の3台 後編

公開 : 2023.03.12 07:06

販売面で成功を収めた、V型12気筒のFRで2+2のフェラーリ。家族で乗れるグランドツアラーを、英国編集部が振り返ります。

実際に日常使いできる初めてのフェラーリ

1972年に発表され、北米で人気を集めたフェラーリ365 GT4 2+2。1985年のジュネーブ・モーターショーで、2度目のマイナーチェンジ版となる412が発表される。

改良は広範囲に及び、シリンダーの内径、ボアが1mm広げられ、V型12気筒の排気量は4943ccに。圧縮比は9.6:1で、インジェクションや排気系にも手が加えられ、最高出力344ps、最大トルク45.8kg-mを発揮した。

フェラーリ412(1985〜1989年/英国仕様)
フェラーリ412(1985〜1989年/英国仕様)

ボディでは、トランクリッドの位置が高くなった。空力特性が理由とされたが、2基目のエアコン・ユニットが標準装備となり、荷室容量の確保にもつながった。ABSが装備され、フロント・サスペンションは再設計を受け、安定性も高めている。

バンパーはボディと同色に塗られ、テスタロッサ風のアルミホイールを履き、新しさをアピール。フロント・ウインカーはクリアレンズへ改められた。

1976年から1985年までに生産された400 GTと400 GTiでは、1796台のうち1210台がATで、市場の安楽志向を示した。一方、412では270台と306台でほぼ二分。時代の変化を匂わせていた。

今回ご登場願った3台、365 GT4 2+2と400 GTi、412はいずれもマニュアル。特に400 GTiと412では、ATより大切に乗られてきた傾向が強い。残存率も大きく異る。

筆者は、この3世代のFRシリーズを、実際にオーナーが日常使いできる初めてのフェラーリだと考えてきた。キャブレター仕様の400 GTと、オートマティックの乗り味を確かめられないことが少々惜しい。

実際の走りに明確な違いはない

365 GT4 2+2は、センターロック式ホイールと、ディーノ風のトグルスイッチが特徴。現オーナーのサイモン・グリーンウッド氏は、これらが初期のFRのフェラーリとの繋がりを想起させると話す。

ダークブルーのボディにはチンスポイラーが備わらず、クリーンなインテリアは機能性重視に見える。この3台では最も美しいと思う。ボンネットを開くと、6基並んだキャブレターが壮観だ。

フェラーリ365 GT4 2+2(1972〜1976年/英国仕様)
フェラーリ365 GT4 2+2(1972〜1976年/英国仕様)

とはいえスタイリングは似ていて、ドライビングポジションもほぼ同じ。実際の走りにも明確な違いはないといっていい。オリジナルのコンセプトが、完成していた証拠だろう。

今の水準でいえば着座位置がかなり低く、ボディは想像ほど大きくない。フロントマスクは控えめで、フロントガラスは強く寝かされ、力強いテールへシャープにラインが伸びる。ルーフラインもタイトだ。

ブラックの412を10年以上所有するのは、ピーター・ヴォーン氏。これまで3万km近くを運転している。ボディと同色で塗られたバンパーが、スタイリングに調和している。4本出しのマフラーを、モダンに隠す役割も果たす。

「フェラーリのクラブイベントには、毎回このクルマで参加しています」。誇らしげに彼が笑う。

その間の年式となるロッソ・チェリーの400 GTiは、フェラーリのレストアを得意とするマイク・ウィーラー氏が仕上げた1台。1983年以降のシーズン2で、低い位置のドライビングライト、リアバンパーのフォグライトなどが見分ける違いだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

V12エンジンでFRの2+2 フェラーリ365 GT4 2+2 400 GTi 412 対極の3台の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

フェラーリの人気画像