マツダ・デミオXD / 13S

公開 : 2014.09.18 23:30  更新 : 2017.05.29 19:13

マニア心を最もソソるのはディーゼルのM/Tだろう。1.5ℓディーゼルは兄貴分の2.2ℓほど(同じデミオの1.3ℓガソリン比での)暴力的なトルクではないものの、5500rpmまでトルクの落ち込みを感じさせずに吹けきって、M/Tで操る快感は上。また、マツダの6段A/Tはけっこう重く、車検証の前軸荷重では変速機だけで50〜60kgもの差がある。Bセグでこの重量差だと、さすがに同じディーゼルでもM/Tのほうが明らかに曲がりも軽快である。16インチのほうがステアリングの利きも鋭くてスポーティだが、軽めのリヤグリップとのバランスがいいのは15インチで、こちらはタイトコーナーに勢いよく突っ込んでも、テールだけがムズムズする兆候は感じなかった。

ただ、ディーゼルM/TはJC08モード30km/ℓの大台に乗せるために、意外にトリッキーなことをやっている。その筆頭がA/Tより燃料タンク容量が9ℓ減らされていること。加えて最大トルクも意図的に控えめ(A/Tが25.5kg-m、M/Tは22.4kg-m)となっており、ギヤレシオも総じてM/Tのほうが高い。というわけで、走りはA/Tのほうが明らかに力強い。マツダのA/Tはキレもあり、ほぼ完全なマニュアル変速も可能なので、A/Tのほうが活発に速い。件の燃費対策にしても、シャシーや安全装備に手をつけていないのでギリギリ許せるが、こういう手段は今のマツダに似合わないのでは……とはいいたくなる。

現状の受注比率は7割がディーゼル、3割がガソリンとか。市場価値的にガソリンがディーゼルよりインパクト薄の感は否めない。新型デミオはアクセラ以上にディーゼルエンジンの重さをうまく隠しているが、それでも前軸重で100kgも軽いガソリンが、圧倒的に軽快なのはいうまでもない。ガソリン・デミオの操縦性はハナもケツも軽い。これほど嬉々として振り回せるクルマも今どきめずらしい。1.3ℓガソリンに特筆すべきパワーや色気はないものの、吹け上がりは軽く、そこそこ良い音がする。ただ、せっかくのM/Tが5段なのがタマにキズで、今回の箱根のアップダウンではギヤ選びに迷うケースもあり、限られたパワーを引き出して、より活発に走ったのはA/Tだった。

もっとも、新型デミオのガソリンM/Tは、ぜひとも免許取り立ての若者に乗ってほしいと思った。ダイナミクスはFF車の教科書のごとし。前に荷重がかかれば、ステアリング反応が鋭くなるとともに、明らかにリヤが軽くなる。キッカケを与えれば、絵に描いたようなタックインを披露。しかし、姿勢変化には抑制がきいていて、ブレーキフィールは国内外を含めてクラスベスト級。つまり、単に限界が低いショボグルマではない。1.3ℓガソリンは柔軟性に富むが、パワーバンドを外せば明らかにパンチが鈍るのも、じつに勉強になる。まあ、これで6段M/Tさえあれば、格好の回春セカンドカーなのに……ともいえるけど。

なんだか細かい話になってしまったが、詳細なスペックを思わず吟味したくなる国産車というだけで、新型デミオは貴重な存在である。Cセグのアクセラに続いて、今回のBセグでも、マツダがけっこう誇らしい日本代表となったのは間違いない。

(文・佐野弘宗 写真・花村英典)

マツダ・デミオXDツーリングLパッケージ

価格 1,998,000円
燃費 30.0km/ℓ
乾燥重量 1080kg
エンジン 直列4気筒1498ccターボ・ディーゼル
最高出力 105ps/4000rpm
最大トルク 22.4kg-m/1400-3200rpm
ギアボックス 6速マニュアル

マツダ・デミオ13S

価格 1,458,000円
燃費 24.6km/ℓ
乾燥重量 1030kg
エンジン 直列4気筒1298cc
最高出力 92ps/6000rpm
最大トルク 12.3kg-m/4000rpm
ギアボックス 6速オートマティック

関連ニュース

▶ 国内初試乗 / マツダ・デミオ・プロトタイプ

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

マツダの人気画像