【現役デザイナーの眼:BMWノイエクラッセ】賛否両論の方向転換 市販化で薄れたコンセプトの軽快感

公開 : 2026.07.23 11:45

現役プロダクトデザイナーの渕野健太郎によるデザイン分析。今回取り上げるのはBMWの次世代プロジェクト『ノイエクラッセ』です。日本発売開始となったiX3を始め、i3、X5に採用されています。その特徴を分析しました。

これまでのデザインから大きく方向転換

7月22日、いよいよ『BMW iX3』が日本でも発表となりました。BMWの次世代プロジェクトである『ノイエクラッセ』は、今回発売されたiX3をはじめ、『i3』に先日本国でデビューした『X5』と3車種出揃っています。

しかし、これまでのデザインから大きく方向転換したので、賛否が分かれていますよね。BMWがこれほど大胆にデザインを変えてきたのは、E36型3シリーズの登場時やクリス・バングルがデザインを指揮した時代以来でしょう。今回はどのような狙いがあるのでしょうか。

7月22日に『BMW iX3』が日本でも発表。BMWの次世代プロジェクト『ノイエクラッセ』、第1弾です。
7月22日に『BMW iX3』が日本でも発表。BMWの次世代プロジェクト『ノイエクラッセ』、第1弾です。    ビー・エム・ダブリュー

近年のBMWは、大型化したキドニーグリルや複雑なキャラクターラインなど、存在感や迫力を強く打ち出すデザインが続いていました。それは主に市場ニーズを反映した結果ですが、一方でBMW自身も、この方向性を続けることに限界を感じていたのではないでしょうか。

ノイエクラッセでデザインを刷新

そこでEV時代の到来に合わせ、新しいブランドイメージを築くために登場したのが『ノイエクラッセ』です。名称も1960年代の名車を受け継ぎ、BMWの原点へ立ち返る意思を示していると言えます。

新しいデザインではキャラクターラインを極力減らし、メッキなどの装飾も最小限としました。キドニーグリルも昔に戻ったような比率に。装飾で個性を作るのではなく、プロポーションや面構成そのもので勝負しようという考え方です。

旧型と大きく異なる印象の新型BMW X5。ボリュームが強い上に影面が主張している前後フェンダーやリアの重さを感じるシルエットなど、プロポーションが洗練されているとは言い難いです。
旧型と大きく異なる印象の新型BMW X5。ボリュームが強い上に影面が主張している前後フェンダーやリアの重さを感じるシルエットなど、プロポーションが洗練されているとは言い難いです。    BMW

トレンドを踏まえた王道のアプローチでありますが、同時にそれはとてもハードルの高いもの。これまでBMWが表現していたスポーティさや高級感を出しにくいんですよね。ちなみに現在この方向性で最も高い完成度を実現しているのは、ランドローバーだと思います。

コンセプトカーから市販車で変わった立体構成

ノイエクラッセには、元になったコンセプトカーが2台あります。『ビジョン・ノイエクラッセ・コンセプト』と『ビジョン・ノイエクラッセXコンセプト』です。この2台で印象的なのはフロントデザインだけではありません。私が特に注目していたのは、ボディサイドの立体構成です。

ドア断面を見ると、一般的なショルダーと呼べるような張り出しがないんですね。サイドガラスからドア面へ滑らかにつながる、台形のような断面構成となっています。まるでキャビンとドアが一塊のような構成なので、要素が少ないという点でミニマルなデザインです。

コンセプトカー『ビジョン・ノイエクラッセ・コンセプト』(上)とその市販車『i3』(下)。ボディサイドの構成も違いますが、シルエットも大きく異なります。特にキャビンからリア周りに関しては全く別の意図でデザインされたようです。
コンセプトカー『ビジョン・ノイエクラッセ・コンセプト』(上)とその市販車『i3』(下)。ボディサイドの構成も違いますが、シルエットも大きく異なります。特にキャビンからリア周りに関しては全く別の意図でデザインされたようです。    BMW

ショルダーがない分、前後シルエットのピーク位置を考えるとやや一体感に欠けるともいえますが、軽快で新鮮な印象を受けてました。

ところが市販車では、明確なショルダーが設けられてます。これは単なる面の修正ではなく、デザインモチーフそのものを変更したと言っても過言ではありません。その結果、コンセプトカーが持っていた軽快さは薄れ、代わりに重厚感や力強さが強調されています。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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