売れた4気筒 売れなかった6気筒 アルファ・ロメオ1900 スーパー 2600 ベルリーナ 前編

公開 : 2023.07.01 07:05

スポーツカー向きのツインカム・エンジン

その結果として6気筒エンジンの2600が誕生するのだが、前座的にタイプ102と呼ばれる、2000 ベルリーナが提供された。1900よりホイールベースは長く、テールフィンの付いたスタイリッシュなボディで覆われていた。

そして1962年、2000の後継モデルとして2600 ベルリーナが登場。テールフィンの省かれたボディは、さらにモダンさを増していた。ところが1900とは逆の意味で、同社に大きな影響を与えてしまう。

ブラックのアルファ・ロメオ1900 スーパーと、ホワイトのアルファ・ロメオ2600 ベルリーナ
ブラックのアルファ・ロメオ1900 スーパーと、ホワイトのアルファ・ロメオ2600 ベルリーナ

果たして、2600 ベルリーナは驚くほど売れなかった。1968年までの6年間にラインオフしたのは2092台。現在となっては、極めて貴重な戦後のサルーンになっている。英国でも販売されていたが、筆者は今日まで実際に目にしたことがなかった。

ベルトーネ社の2600 スプリント・クーペや、トゥーリング社が手掛けたコンバーチブル、2600 スパイダーにすら届かない台数だった。2600 ザガートよりは多かったけれど。

1950年代へ話を戻すと、1900は傑作のイタリアン・サルーンとして高く評価されていた。特にツインカムの4気筒エンジンは、当時最も優れた量産ユニットの1つだった。

ショートストローク型で、ナトリウムを封入した排気バルブが組まれ、優れた効率を実現。5ベアリング構造で耐久性も高く、高回転を長時間続けられる余裕があった。サルーンのボディに、スポーツカー向きのエンジンが載っていたといっていい。

車重は1169kgと比較的軽量。一般道でポテンシャルを引き出すことが可能だった。

ボルボ・アマゾンに間違われるスタイリング

今回ご登場願ったのは、1956年式の1900 スーパー。クエンティン・バトラー氏が現オーナーで、2007年に購入している。新車時からイタリアで乗られており、1990年にレストアを受け、2003年に英国へ輸入されたという。

バトラーが購入後は、ダッシュボードの時計とシートベルトを交換。ダイナモからオルタネーターへ置き換え、点火系もアップデートしている。ステアリングラックのリビルドには、かなり苦労したと振り返る。

アルファ・ロメオ1900 スーパー(1950〜1959年/欧州仕様)
アルファ・ロメオ1900 スーパー(1950〜1959年/欧州仕様)

「最近は、週末の小旅行を楽しんでいます。ベルギーまで、往復で1600kmを走ったこともありますが、まったく問題は起きませんでした」

サイドガラスには肉厚なフレームがまわり、現代では許されないであろう鋭利な装飾がボンネットに載っている。1950年代初期のデザインとして、一般的なスタイリングだといえる。しばしば、ボルボ・アマゾンに間違われるとか。

テールライトは、オリジナルとは違うとバトラーは考えている。刻印から判断するに、イタリア製ではあるようだが。

インテリアには上質感が漂う。クッションの効いたベンチシートはクロス張りで、この時代の欧州車的な、無駄を省いたシンプルなダッシュボードが優雅にカーブを描く。本来の定員は6名だが、筆者のような体型では難しいだろう。

荷室は長く深い。イタリアの警察から、1900が支持を集めたのも理解できる。給油口も荷室内にある。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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