オーナーのお望み通りに ベントレー・バトゥールへ試乗 W12の最後を飾る18台 後編

公開 : 2023.06.24 08:26

コンチネンタルGTへ近い走行時の印象

内装を包む素材も、従来以上に多様な選択肢が用意されている。希少な木材を取り扱う業者へ担当者が出向き、手配することも可能だとか。

バトゥールの金額の多くは、このような特装へ費やされるように思えるが、それだけではない。チューニングを受けたW12気筒エンジンは、様々な気候条件で稼働テストにかけられる。特別なレザーも、日光でどのように経年劣化するのか実験される。

ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)
ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)

今回ステアリングホイールを握らせてもらったプロトタイプも、そんな実験台になっている。走行距離は3万kmを超えていた。それでも、使い込まれた印象は殆どない。カップホルダー部分には、非常時に電気を遮断するキルスイッチが隠れていたが。

走行時のフィーリングは、コンチネンタルGT スピードへ非常に似ている。そのオーナーなら、目隠しをして乗っても、関係性が近いことへ気付けるだろう。

ステアリングホイールのデザインは、バトゥール独自のもの。直径はちょうどよく、リムは握りやすい太さ。重み付けも適正で、とてもスムーズに反応し、高性能グランドツアラーとして望ましいレスポンスが得られる。

素晴らしいW12エンジンも、従来どおり。アイドリング時は静かに威圧するようなサウンドを放ち、アクセルペダルを踏み込むと一層唸りを強める。そこから一気に緩めると、アフターファイヤーの破裂音やゴロゴロとグズるノイズが交じる。

レッドゾーンは6000rpmだが、極めてパワフル。その高揚感には中毒性がある。

限定モデルでありながら高度に洗練され豪華

現世代のコンチネンタルGTは、重いW12エンジンが載っていても、先代より遥かに軽い身のこなしと、リアタイヤの仕事ぶりが特徴といえる。それは見事に保たれている。削減された車重は40kgと小さくても、バトゥールは従来以上に軽快に感じられた。

アクティブ後輪操舵システムが、想像以上の速度域での鋭い回頭性を叶えている。日常的な走り方でも、コーナーの出口でリアタイヤが向きを整えようとする仕草を感取できる。

ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)
ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)

このサイズのグランドツアラーとして、ドライバーへの訴求力は相当に高い。意欲的に運転したいと思わせてくれる。

そして、熟成されたコンチネンタルGTと同じくらい磨き込まれている。厳しいテストに挑んでいるプロトタイプでも。マクラーレンフェラーリポルシェといったブランドの限定モデルで、ここまで洗練され豪華に感じられた例を、筆者は知らない。

特別にスポーティさを強めれば、快適性が酷く犠牲になることが殆ど。バトゥールは、それらと同じくらいモナコやモントレーで唯一の存在になれつつ、往復の道ではシルキーな快適さへ浸れる。ベントレーならではといえる。

この事実を、目の肥えた裕福なクルマ好きは知っているのだろう。18台のバトゥールは、既にすべて納入先が決まっているらしい。

ベントレー・バトゥール(欧州仕様)のスペック

英国価格:198万ポンド(約3億4650万円)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:336km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:320g/km
車両重量:2233kg
パワートレイン:W型12気筒5998ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:750ps/5500rpm
最大トルク:101.8kg-m/1750-5000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック/四輪駆動

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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