オーナーのお望み通りに ベントレー・バトゥールへ試乗 W12の最後を飾る18台 後編

公開 : 2023.06.24 08:26

ベントレーのコーチビルド部門、マリナーが仕上げる特別なクーペ。W12エンジンの最後を飾る1台を、英国編集部が評価しました。

過去に例がないほど能力の幅が拡張

ベントレー・バトゥールは、同社の歴代の量産モデルでは最も強力。新しいコンプレッサーを得たターボチャージャーが2基組まれ、インテークパイプの太さは33%、インタークーラーの容量は35%も増やされている。

その結果、最高出力は750ps/5500rpmへ上昇。最大トルクは101.8kg-m/1750rpm-5000rpmに達する。

ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)
ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)

トランスミッションは、コンチネンタルGT スピードと同じ8速デュアルクラッチ・オートマティック。アクティブ後輪操舵システムと、電子制御のリミテッドスリップ・デフも受け継がれている。

同社として最もダイナミックなクーペとするべく、サスペンションにも僅かに手が加えられた。リアのトレッドは8mm広げられ、安定性を引き上げただけでなく、より凛々しい雰囲気を生んでいる。

美しく希少なボディはカーボンファイバー製。車重はベース車両から40kg軽くなり、2233kgとなっている。増強されたエンジンと相まって、0-100km/h加速は3.4秒、最高速度は336km/hが主張される。

ドライブモードは複数用意されるが、ドラマチックさを高めるべく、デフォルトがスポーツ・モードへ設定されている。多くの変更が加えられ、出色の洗練性が犠牲になってしまわないか不安になるが、そこはベントレー。まったく心配はいらない。

強みはそのまま、過去にないほど能力の幅が広げられたと考えていい。上質でありながら、今まで以上に運転を堪能できる。求めれば、330km/hで飛ばすことも許容する。

マリナー部門の職人が手仕事で仕上げる

ベントレーで最高技術責任者を務めるポール・ウィリアムズ氏は、マリナー部門の職人が手仕事で仕上げることが、洗練性で有利に働くと説明する。例えば、時間をかけて防音材を丁寧に組み付けることで、通常のコンチネンタルGTより静寂性は高まるという。

インテリアを観察すると、ダッシュボードや、その中央に吸えられる回転式モニター、細かなスイッチ類などが、ベースのコンチネンタルGT スピードから引き継がれているのがわかる。運転席へ座ると、過去に出会った人のように、すぐに馴染める。

ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)
ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)

それでも、モニターにレンダリングされるメーターのグラフィックや、ドアパネル、シートなどはバトゥールの専用品となり、雰囲気はだいぶ異なる。主要なスイッチ類は、希望に応じて3Dプリンターで成形可能だという。

リアシートは省かれ、荷物を置ける空間が作られている。開口部が小さめで、奥に広い荷室は従来どおり。お望みなら、専用の旅行カバンなども依頼可能だ。

どこまで自由が効くのか興味を抱かれるもしれないが、バトゥールはホームページ上のコンフィギュレーターには含まれていない。ベントレーのディーラーで直接相談するか、専任デザイナーを派遣してもらうことになる。

ちなみに、3Dプリンターで成形された金色のエアコン用スイッチが、プロトタイプの1台に装備されていた。他方はチタンで試作されていたが、もう少し表面は磨き込んだ方が良さそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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