オーナーのお望み通りに ベントレー・バトゥールへ試乗 W12の最後を飾る18台 前編

公開 : 2023.06.24 08:25

ベントレーのコーチビルド部門、マリナーが仕上げる特別なクーペ。W12エンジンの最後を飾る1台を、英国編集部が評価しました。

1台限りのクルマを所有できる稀有な機会

ベントレー・バトゥールへ求められる驚くほどの金額は、カーボンファイバーやレザー、様々な金属、高度な技術だけに支払われるのではない。他人が所有していない、1台限りの特別なクルマを注文できるという、稀有な機会へも支払われるといえる。

実際のところ、可能な限りオーナーが望む通りのクルマを提供しようと、ベントレーは努めている。ラインナップの1つ、コンチネンタルGTを例にすれば、マリナーが厳選したオプションの組み合わせは460億通りにもなるという。

ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)
ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)

オーダーする側は、対価を支払うことをいとわない。平均で1台に3万ポンド(約525万円)も、オプションへ費やされるとか。

一層特別な1台を求めるなら、「マリナー・ビスポーク」という、ワンランク上のオプションも用意されている。そのぶん価格は跳ね上がるが、2022年のベントレーの生産数は前年比で4%増に留まったのに対し、利益を82%伸ばした要因の1つになっている。

しかし裕福なクルマ好きの場合、既存モデルに専用オプションを追加しただけでは納得できないという人もいる。そこで社内のコーチビルド部門、ベントレー・マリナーの出番となる。

バトゥールの英国価格は、198万ポンド(約3億4650万円)。カスタマイズの幅は、従来の比ではない。合計18台が作られるものの、ある1台のコーディネートが他の17台とかぶることはないはず。

ベース車両はコンチネンタルGT スピード

バトゥールのベース車両はコンチネンタルGT スピードで、現在完成しているのは、プロトタイプの2台のみ。ベントレーのデザインの方向性を示し、W型12気筒エンジンの有終の美を飾り、コーチビルド・プログラムの頂点に輝く存在となる。

2021年に登場した、印象的なベントレー・バカラルをご記憶の方もいらっしゃるだろう。バトゥールは、その後継モデルに当たる。

ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)
ベントレー・バトゥール・プロトタイプ(欧州仕様)

同社は、スタイリングについて特徴を3つ挙げている。ライオンが身を屈めて休んでいるような、レスティング・ビーストモードと呼ばれるテールエンドの処理と、サラブレッドの胸筋のように、屈強さを主張する直立したフロントグリルが、そのうちの2つ。

そして、エンドレス・ボンネットと主張される、フロントノーズから滑らかにボディ後方へ流れるラインが3つ目。確かにバトゥールを横から見ると、フロントからリアへ勢いよくカーブで結ばれている。W12気筒エンジンの存在を強調するように。

究極的には、世界で最も美しいクルマの1台に数えられる、1950年代のベントレーRタイプ・コンチネンタルを彷彿とさせることが目指されたそうだ。つまり、バトゥールも類稀な美しさが追求されたということだろう。

ベントレーでマリナー部門とモータースポーツ部門の最高技術責任者を務める、ポール・ウィリアムズ氏は、「わたしたちの未来のデザイン言語(特徴)を知っていただく機会です」。と話す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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