【6億円のオーダーメイド】アストン マーティン・ヴィクターへ試乗 848psのNA V12

公開 : 2021.05.29 08:25

848psのV12エンジンを搭載した2シーターのFRクーペ、ヴィクター。裕福なオーナーがオーダーメイドした1台に、英国編集部が試乗しました。

もくじ

6億円で作らせた自分だけのアストン
すべてが正しいと感じられるコクピット
あらゆる部分がダイレクト
今後手に入らないという悲しい現実
アストン マーティン・ヴィクター(欧州仕様)のスペック

6億円で作らせた自分だけのアストン

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
時々、筆者にとって願い通りのことが起こる。完璧なクルマへ身を置くことだ。

そんなクルマというのは、フロントエンジンの2シーター・クーペ。エンジンはハイチューニングの自然吸気V型12気筒で、MTを介して後輪のみを駆動するなら完璧だ。こんな構成は、近年では尚のこと珍しい。

アストン マーティン・ヴィクター(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴィクター(欧州仕様)

2021年では、ステアリングホイールのシフトパドルは当たり前。四輪駆動で、エンジンにはターボかハイブリッド用モーターが付いていることがほとんど。理想的なクルマを見つけることは難しい。

しかし400万ポンド(6億円)の予算を惜しまないドライバーなら、自身のために1台作って欲しいと、どこかのブランドを説得できるかもしれない。それを実行した人物こそ、アストン マーティン・ヴィクターのオーナー。ベルギー在住だという。

そんなワガママを可能にした理由の1つは、アストン マーティン社内に2009年のワン-77用に作られた、プロトタイプのタブシャシーが保管されていたから。偶然にも。

7.3Lの自然吸気V型12気筒エンジンはコスワース社へ一度送られ、最高出力をさらに引き上げられている。760ps/7500rpmだったものが、目もくらむような848ps/9000rpmへ増強された。

サスペンションは、サーキットのためだけに生まれたハイパーカー、ヴァルカン由来。プッシュロッドがボールジョイントで結ばれ、公道も走れるように車高や動作特性に変更を受けている。

すべてが正しいと感じられるコクピット

ブレーキも、ヴァルカン由来のカーボンセラミック。冷えていても確実に効くように、ブレーキパッドは専用だという。

艷やかなボディは、すべてカーボンファイバー製。1977年から1989年にかけての傑作、V8ヴァンテージのスピリットを感じさせるデザインにまとめられている。

アストン マーティン・ヴィクター(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴィクター(欧州仕様)

でも筆者が想起されたのは、1970年のDBS V8の方。1974年にモータースポーツへ参戦し、1977年と1979年には大幅な改造を受けたマシンでル・マン24時間レースを戦った。ブレーキパッドの減りが激しかった記憶がある。

この話をヴィクターの開発エンジニア、アメルパル・シンへ話したら、「それを覚えているんですね。われわれも開発期間中、そのマシンのことを考えていました」。と答えてくれた。

試乗したのは、英国シルバーストーンの内側にある小さなストウサーキット。路面が乾燥していたとしても、ヴィクターの能力を充分に発揮できるほど広いエリアはない。でも、その素晴らしさは確かめられた。

ヴィクターのシートに身を沈めステアリングホイールを握ると、すべてが驚くほど正しいと感じられる。コクピットは個性的で美しい。メーターパネルは、ヴァルキリーのものだという。

準備が整い、慎重に発進させる。筆者の前に試乗していたドライバーは、ミシュラン・カップ2タイヤが濡れた路面を充分に掴めず、2回はスピンしていた。筆者も最初のコーナーを、グリップ状態ではない角度で抜けた。

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