フェラーリSF90 XX 「限界」を超えた公道レーサー、世界限定1398台 エアロとパワー大幅強化

公開 : 2023.06.30 06:05

フェラーリはサーキット走行に焦点を当てた新たな高性能モデル「SF90 XX」を公開しました。ストラダーレとスパイダーあわせて1398台の限定生産で、すでに完売しているとのこと。

ポテンシャルを限界まで引き出す

フェラーリは、サーキットに特化した高性能モデルとして「SF90 XX」を発表した。レースで磨かれた数々の技術を、公道でも味わえるよう設計されている。

ストラダーレ(クーペ)とスパイダーの2種類のボディタイプが用意され、開発責任者のジャンマリア・フルゲンツィ氏によれば、「車両のポテンシャルを限界まで高める」ことを目的として開発されたという。

フェラーリSF90 XXスパイダー
フェラーリSF90 XXスパイダー    フェラーリ

チーフ・テスト・ドライバーのラファエル・デ・シモーネ氏は、パフォーマンスを飛躍的に向上させるだけでなく、「ドライバーに自信を与え、クルマを限界までプッシュできるようにする」ことが必要だと語っている。

新型SF90 XXはエアロダイナミクスを大幅に強化し、1995年のF50以来となる固定式リアスポイラーを装備する。リアデッキを下げてウィングの進路に空気を偏向させるガーニーフラップとの組み合わせにより、250km/hで最大315kgのダウンフォースを発生させる。

フロントからリアへの空力負荷のバランスをとり、ドライバビリティを向上させるため、ボンネットの下は密閉され、そこに新しいS字型ダクトが組み込まれ、熱気を車外に流している。この機構だけでフロントのダウンフォースは20%向上し、SF90 XXの最高速度320km/hでは合計325kgに達する。

この変更により、SF90 XXはこれまでで最も空力効率の高いフェラーリのロードカーとなった。デ・シモーネ氏は、サスペンションを改良してリアの車高を下げ、ボディのロール率を10%低減し、安定性がさらに高まったと述べた。

サーキットでのパフォーマンス大幅向上

ダウンフォースを高めるだけでなく、エアロダイナミクスの見直しによって、ラジエーターへの冷気の流れが改善され、冷却性能が向上。従来のSF90に比べて30psのパワーアップ(4.0L V8ツインターボで17ps、電気モーターで13ps)を実現した。合計出力は1030ps、最大トルク82.0kg-mとなる。

電気モーターには、フェラーリのF1マシンに由来する「エクストラブースト」システムが採用され、加速時には一時的にフル出力を発揮することができる。

フェラーリSF90 XXスパイダー
フェラーリSF90 XXスパイダー    フェラーリ

7.9kWhバッテリーの残量は30個の「トークン」に分割して表示される。フィオラノ。サーキットでQualifyモードを起動すると、ラップタイムが0.25秒短縮され、その過程で30個のトークンのうち7個が使用されるという。

このQualifyモードでは、SF90 XXの0-100km/h加速はわずか2.3秒となる。

再設計されたフロントブレーキと大径(390mm)リアディスクは、296 GTBでデビューしたABS-Evoシステムと連動して制動力を向上させている。200km/hから0km/hまでの制動距離は108.1m、100km/hから0km/hまでは29.2mとされる。

エグゾーストシステムも「より豊かな、よりリッチなサウンド」を生み出すために改良された。高回転域でスロットルを開けたときに発生するオーバーラン・ノイズを改善するという新しいトランスミッション・ソフトウェアも導入されている。

SF90 XXには、「(サーキット走行専用の)XXモデルに通常使用されるすべての技術的特徴が組み込まれている」と、マーケティングおよびコマーシャル責任者のエンリコ・ガリエラ氏は語る。その1つが、これまでのフェラーリで最も軽量なシートであり、これも含めて従来のSF90ストラダーレ(あらゆる軽量化オプションを装着した場合の車重は1570kg)と比較すると、全体で10kgの軽量化を実現している。XXスパイダーは1660kgとなる。

フェラーリは、SF90 XXのフィオラノ・サーキットでのラップタイムをまだ公表していないが、ガリエラ氏はAUTOCARに対し、通常のSF90との差は「相当なもの」であり、今年後半に専用の発表イベントを開催する価値があると考えるほどだと強気な姿勢を見せた。通常のSF90は、1分19秒で同サーキットを周回したロードカーの現行記録保持者である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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