公道では受け止めきれない能力 フェラーリSF90 スパイダーへ試乗 合計1000psのPHEV

公開 : 2022.06.22 08:25

凄まじく速いPHEVのフェラーリにスパイダー登場。オープン化が一層のドラマチックさを加えると、英国編集部は評価します。

驚異的な動力性能を発揮するPHEV

フェラーリSF90 ストラダーレは、英国のテストコース、MIRAで輝かしい記録を残している。ハンドリングサーキットでのラップレコードを更新し、加速力の数字も塗り替えた。しかし、最高のドライビング体験だったと結論づけてはいない。

V8ツインターボ・エンジンを載せたスーパーカーには、同社の量産モデルとして初めて、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)技術も搭載されていた。その結果、最高出力1000psという驚異的な動力性能を獲得。息を呑むレスポンスを実現していた。

フェラーリSF90 スパイダー(英国仕様)
フェラーリSF90 スパイダー(英国仕様)

フェラーリの技術力へ唸ると同時に、新水準といえた動力性能には心底驚かされた。しかし車重は増えており、操縦性は電子デバイスの存在感が大きいものだった。

従来のミドシップ・フェラーリが備えていた、流れるように繊細で自在に操れる甘美な特性が、今後のハイブリッド化で揺らぐのではないかと危惧した。しかし、フェラーリF8トリブートの後継モデル、296 GTBが、そんな心配を打ち消してくれた。

V6ツインターボ・エンジンにPHEV技術が組み合された296 GTBは、感嘆するほどエネルギッシュで、フィーリングの豊かなミドシップ・フェラーリだ。システム総合で830psを発揮しつつ、価格は抑えられている点もうれしい。

ハイブリッド技術でわれわれを一喜一憂させるフェラーリだが、最新のSF90 スパイダーが登場した。その名の通り、SF90 ストラダーレのコンバーチブルで、シャシーとパワートレインは基本的に変わらない。

長距離を快適にこなせる乗り心地

最大48km/hまでなら走行中でも開閉できる、リトラクタブル・ハードトップを備えているのが特徴。動作は14秒で完了するから、信号待ちでも余裕だろう。駆動用モーターでの静かな走りから、300km/hで髪をなびかせての疾走まで、幅広い楽しみ方ができる。

このリトラクタブル・ハードトップはコンパクトで、通常なら150Lから200Lほどの容積が必要なところ、100Lに納まったとフェラーリは強調する。しかし、SF90 ストラダーレと同じく、リアにラゲッジケースは存在しない。

フェラーリSF90 スパイダー(英国仕様)
フェラーリSF90 スパイダー(英国仕様)

フロントノーズの内側に、75Lの空間があるだけ。充電ケーブルと小さな旅行かばんを1つ積めば、一杯になってしまう。長距離ツーリングを楽しみたい人にとっては、頭の痛い問題かもしれない。

今回試乗したSF90 スパイダーには、サーキット走行へ主眼をおいたアセット・フィオラノ・パッケージが装備されていない。軽量化され、マルチマティックと呼ばれるレーシングダンパーが装備され、ハードコアなフェラーリに仕上がるオプションだ。

だが、標準サスペンションのSF90 スパイダーは、上級なグランドツアラーのように乗り心地が素晴らしい。想像以上に洗練された質感で、長距離移動を快適にこなすことができるだろう。

最高出力1000psと聞くと、強烈な加減速や容赦ない乗り心地を想像しがちだが、そんなことはない。パワートレインもシャシーも、とても上質に仕立てられている。路面の凹凸に惑わされることなく、ひたすらこのフェラーリが速い、という印象を味わえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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