歴代最強の634ps/86.5kg-m アルピナB5 GTへ試乗 G30型のラストを飾る250台

公開 : 2023.07.21 08:25

思い切りテールを振り回すことも自在

アルピナによれば、シャシーも僅かに引き締められているとのこと。だが、オリジナルのB5が持つ、優れた衝撃吸収性を失わないことへも注意が払われた。

結果として、サスペンション・スプリングのレートとダンパーの減衰力、アクティブ・アンチロールバー、後輪操舵システムの特性などに手はつけられなかった。バンプストッパーは新しいというが、それは極めて高負荷時に効果を発揮するに過ぎない。

アルピナB5 GT(欧州仕様)
アルピナB5 GT(欧州仕様)

車高は僅かにリア側で落ちている。四輪駆動システムのトルク分配率も、若干リア寄りになった。シャシー剛性を高めるため、フロントサスペンションのストラットトップとバルクヘッド間に、新しいブレースも装備されている。

この内容から考えると、コーナーではごく僅かに鋭敏さを増しているはず。だが、直接乗り比べても変化へ気付くことは難しいだろう。

少なくとも、ザントフォールト・サーキットで存分に楽しませてくれたことは間違いない。手に負えないアグレッシブさはなかった。ステアリングのレシオは理想的といえ、低速コーナーでは思い切りテールを振り回すことも自在。直感的に扱える。

リアアクスルにはリミテッドスリップ・デフが組まれ、オーバーステアを支配下に置くことへ貢献している。従来のB5と同じく、モータースポーツで愛用されるドレクセラ社製の機械式。M5の電子制御LSDより、挙動を読みやすい。

容姿は文化的なステーションワゴンにも見える。だが、本気を出せばワイルドでもある。

壮大なスーパーサルーン/ワゴンの節目を飾る

オーバースピードでコーナーへ突っ込むと、1980kgのB5は、M5 CSより穏やかなアンダーステアへ転じやすい。つまり、驚異的に速いのと同時に、基本的にはドライバーへ優しい安定志向でもある。

今回は許されなかったが、公道へ出れば、その安楽さへも心が打たれるだろう。舗装の古いコース裏の通路を走らせた限り、充分しなやかに思えた。

アルピナB5 GT(欧州仕様)
アルピナB5 GT(欧州仕様)

通常のB5とB5 GTとを見分けるポイントとしては、ブロンズゴールドのアルミホイールがわかりやすい。また、ディフューザーがフロントバンパーの下から突き出ている。

インテリアでは、アルカンターラで包まれた、M5仕様のフロントシートをオプションで選べた。ステアリングホイール裏には、マロン・ボルシアーノというカラーで着色された、アルミニウム製のパドルが光る。

全体的なコーディネートとしては、かなり控えめではある。だが、壮大なスーパーサルーン/ワゴンの節目を飾るモデルとして、ピッタリの仕上がりだと思う。

アルピナB5 GT(欧州仕様)のスペック

英国価格:約12万5000ポンド(約2187万円)
全長:4978mm
全幅:1868mm
全高:1466mm
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1980kg
パワートレイン:V型8気筒4395ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:634ps/5500-6500rpm
最大トルク:86.5kg-m/3500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック/四輪駆動

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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