アルピナB5 GT ツーリングへ試乗 創業者が「最後に見届けた」高速ワゴン 感服の滑沢さ

公開 : 2024.02.06 19:05

アルピナ創業者が最後に見届けた高速ワゴン、B5 GT ツーリング 高級感に溢れ高品質なインテリア 中毒性のあるエネルギー放出 英国編集部が一般道で評価

創業者が最後に見届けた高速ワゴン

アルピナB5 GT ツーリングと、フェラーリF40。V8ツインターボエンジンを積むことと、最高速度が320km/hを超えることくらいしか、共通する部分は思い浮かばないだろう。どちらも希少だが、B5 GT ツーリングは250台に限られ、F40より遥かに少ない。

しかし、この2台には重要な共通点が1つある。それは、販売されるタイミングだ。

アルピナB5 GT ツーリング(英国仕様)
アルピナB5 GT ツーリング(英国仕様)

F40は、フェラーリを創業したエンツォ・フェラーリ氏が、最後に手掛けた量産モデルになった。このB5 GT ツーリングも、発表された2か月後の2023年10月に、ブランドを立ち上げたブルカルト・ボーフェンジーペン氏がこの世を去った。

悲しい一致ではある。この事実を知ると、一層特別感は増すはず。

筆者は、オランダ・ザントフォールトのサーキットで発表時に試乗しているが、深い記憶を刻んだ仕上がりだった。現行のB5から25psと5.1kg-m増強され、最高出力634ps、最大トルク86.5kg-mを獲得しているが、それだけではない。

トランスミッションは、通常ならロールス・ロイスファントムに用いられる強化部品でアップグレードされた、ZF社製の8速オートマティック。四輪駆動が叶えるトラクションは凄まじく、かつ落ち着いてもいた。

FIA規格に対応したドライのサーキットを、 小さく感じさせるほど見事な走りを披露した。そして今回は、冬の英国の一般道。グレートブリテン島へ導入されるのは、すべてステーションワゴンのツーリングで、僅かに21台だという。

フロントにカナード 豪奢で高品質なインテリア

通常のB5との、見た目の違いは限定的。一番の特徴となるのが、ブロンズに塗装された20インチのマルチスポーク・アルミホイールだろう。BMW M5 CSと似た処理といえるが、より深みのある色が選ばれている。

時間をかけて観察すると、フロントバンパーの下部に追加されたカナードへ気付く。ステーションワゴンでも。英国ツーリングカー選手権を戦った、ボルボ850にもこんな装備はなかった。少し古い話だが。

アルピナB5 GT ツーリング(英国仕様)
アルピナB5 GT ツーリング(英国仕様)

B5 GT ツーリングは、フェイスリフト後のBMW 5シリーズをベースに開発された。エアインテークは拡大され、幅広いタイヤの奥に収まるブレーキと、大きなインタークーラーを効果的に冷やす。

強力なエンジンが、550i用の4.4L V8ツインターボをベースにすることは、通常のB5と変わらない。

インテリアは、ウォールナット・トリムで飾られた上質な空間。ヘッドレストは驚くほど柔らかく、中央にB5 GTと大きく刺繍されている。ステアリングホイール奥のシフトパドルは、アルミから削り出され、ホイールと同じくブロンズ色に染められている。

英国価格が12万7900ポンド(約2379万円)もすることを考えれば当然だが、豪奢で高品質。レザーがふんだんに用いられている。

B5 GT ツーリングを賢く堪能するなら、ラヴァリナ・レザー巻きのステアリングホイール上に用意された、「LIM」ボタンを活用した方が良い。設定以上にスピードが出せなくなる、任意のリミッターだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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