フェラーリ・ローマへ大接近 アストン マーティンDB12に試乗 4.0L V8は680psへ 前編

公開 : 2023.07.07 08:25

伝統のグランドツアラー、DBシリーズが12へ一新。11から大幅にアップデートされた実力を、英編集部が評価しました。

タッチモニターを獲得したDB12

アストン マーティンDBX707のダッシュボードには、現代的なモデルらしく大きめのモニターが据えられている。メディア向け発表会で、豪奢なインテリアへ心を打ちつつタップしようと指を伸ばすと、意外にもタッチモニターではなかった。

素晴らしいスタイリングで、聴き応えあるサウンドで、胸のすくようなパフォーマンスを披露するとしても、ハイブランドの最新モデルでありながらタッチモニターではない、という事実はなんとも寂しい。しかし、このDB12にはしっかり搭載されている。

アストン マーティンDB12(欧州仕様)
アストン マーティンDB12(欧州仕様)

インフォテインメント・システムに表示されるメニューの文字が小さく、まだソフトウエアの動作にはぎこちない部分が残っていた。数週間後に迫った量産開始までに、エンジニアは完璧を目指すという。

そのソフトウエアがメルセデス・ベンツからの流用ではなく、アストン マーティン独自開発だということは、特筆に値する。最終的な仕上がりへ期待したいところだ。画面のサイズは、少し小ぶりかもしれないが。

DBシリーズのような世界を代表するグランドツアラーで、新世代の試乗レポートがタッチモニターの話題で始まる、というのは最適ではないかもしれない。恐らく、かつてのDB5の記事も、ダッシュボードのスイッチ類から綴られてはいないはず。

しかし、先代が抱えていた小さくない課題を克服したといえる。アストン マーティンというブランド・イメージにも、影響を与えていた事実だったと思う。

エンジンは増強されたAMG由来の4.0L V8

今回の世代交代で、モデル名はDB11からDB12へ数字が1つ増えている。しかし、DB9からDB11へモデルチェンジした時のように、まったくの新設計へ生まれ変わったわけではない。

それでも、フェイスリフトやマイナーチェンジと表現する以上の進化は得ている。特にスタイリングやインテリアは刷新されており、新しいモデル名が与えられたことへ疑問を抱く必要はないだろう。

アストン マーティンDB12(欧州仕様)
アストン マーティンDB12(欧州仕様)

アストン マーティンによれば、DB12のハードウエアの80%は新しいとのこと。制御ソフトウェアは、100%書き換えられたそうだ。

スタイリングを観察してみると、角度によってはDB11の面影がある。斜め後方や、真横のフォルムは特に。しかし、フロントマスクや全体的なプロポーションは明確に新しい。先代と混同してしまう、ということはないはず。

全幅が広げられたことで低くワイドに見え、走りに対して意欲的に感じられる。アストン マーティンは、DB12をグランドツアラーではなくスーパーツアラーだと呼ぶ。グランドツアラーでは、充分に特性を表現しきれないと考えているのだろう。

メカニズムのアップデートは、かなり広範囲に及んでいる。エンジンは、V型8気筒ツインターボ・ガソリンのみで、V型12気筒は設定されない。

先代と同じくメルセデスAMG由来のユニットとなり、排気量は4.0L。従来よりターボチャージャーが大径化され、冷却効率が高められ、圧縮比に調整を受け、カムの設計も新しい。その結果、大幅なパワーアップを果たしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリ・ローマへ大接近 アストン マーティンDB12に試乗 4.0L V8は680psへの前後関係

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