ポルシェ911 ダカールで真冬のキャンプ(1) 道具感ある見た目に好感 山頂を目指す

公開 : 2023.12.23 09:45

ランドローバーディフェンダーのよう

スコットランドはすっかり真冬。ピトロクリーという小さな町を取り囲む森は、深いグリーンと淡いブラウンに、散り残ったイエローが入り混じりカラフル。ギャリー湖にはガスがかかり、幻想的な景色を生んでいた。

ケアンゴームズ国立公園へ入り、ジンの蒸留所も営むウォルター・ミックルスウェイト氏と対面。彼は、200エーカー(約81万平方m)の広大な敷地を自由に走らせてくれるという。

ポルシェ911 ダカールと筆者、リチャード・ウェバー
ポルシェ911 ダカールと筆者、リチャード・ウェバー

911 ダカールをオフロードモードへ切り替え、最低地上高を最大にする。前後アクスルを結ぶクラッチはデフォルトにし、前後へ均等にトルクが分配されるように。アクセルペダルを踏むと、レスポンスが一層鋭くなったことがわかる。

グラベルの小道を飛ばす。石が露出したスペイ川の河川敷へ入るが、911 ダカールはまったく意に介さない。ランドローバー・ディフェンダーのようだ。

さらなる冒険を求めて、ミックルスウェイトが所有する山へ。湿度が高く、シダ植物が栄えている。ゴツゴツとした岩が露出した、滑りやすそうな急斜面へ挑む。

シャシー底面へ、尖った岩が接することはない。トラクションを維持したまま、一定の低速度で頂上へ近づいていく。見事なまでに繊細なアクセルレスポンスに、高性能なヒルホールドと8速ATのマッピングが相乗し、ステアリング操作へ集中できる。

長いオーバーハングが生む制限

背の高いオフローダーにありがちな、グラつきは皆無。後輪操舵システムが、小気味よくフロントノーズの向きを変える。

サラウンドビュー・カメラは、路面を映し出す。手強い障害物を乗り越えつつ、映像を眺める余裕すらある。ぬかるんだ沼地へ近づいても、911 ダカールはひるまない。

ポルシェ911 ダカール(英国仕様)
ポルシェ911 ダカール(英国仕様)

森林限界に達し、突如視界がひらける。大きな障害といえば、深くえぐられた小川程度。最低地上高は、エアサスを組んだポルシェカイエンの80%に迫る。スチールコイルのカイエンなら、90%以上になる。

ただし、911 ダカールは前後のオーバーハングが長い。フロントのアプローチ・アングルと、リアのディパーチャ・アングルは、それぞれ16度と18度で限定的だ。

頂上の手前で、通過できないほど深い溝へ出くわした。フロント・オーバーハングが、あと30mm高い位置にないとクリアは難しい。リカバリーボードやラダーを敷かなければ、これ以上先には進めなさそうだ。

エンジンを停めると排気音も収まり、静寂に包まれる。左手には針葉樹林が広がり、右手には背の低い高山植物が茂っている。眼下には、ボート・オブ・ガーテンの町の灯りが、日没の大地に浮かび上がっている。

この続きは、ポルシェ911 ダカールで真冬のキャンプ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ウェバー

    Richard Webber

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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